国内

防衛大、学生2000人外出禁止 ストレスで自殺未遂者情報も

コロナ対策で出席者を限定して開かれた今年の防衛大卒業式(時事通信フォト)

コロナ対策で出席者を限定して開かれた今年の防衛大卒業式(時事通信フォト)

 新型コロナの影響で学生たちがキャンパスに通えない状況となり、全国の大学が対応を余儀なくされている。文科省の調査によれば、多くの大学でオンライン授業が実施・検討されている。しかし、そうしたなかで全く異なる状況にあるのが、将来の自衛隊の幹部自衛官を養成する「防衛大学校」(神奈川県横須賀市)だ。オンライン授業は導入されず、学生たちは寮(学生舎)がある防衛大の敷地から出られない状況が続いているのだ──。

「入学したばかりの1学年(1年生)たちは、精神的にかなり不安定になっていると思います。ストレスからか、首つりやリストカット、飛び降りといった自殺未遂、自傷行為が複数、起きているんです……」

 そう話すのは現役学生のひとりだ。防衛大では4学年の約2000人が全寮制生活を送る。新型コロナの影響で4月5日に予定されていた入校式典は延期になり、緊急事態宣言の発令を受けて5月6日まで授業訓練の中止が決まったが、そうしたなかで新1年生を含む学生たちは防衛大の敷地内の寮で集団生活を続けなくてはならなかった。防衛大関係者が明かす。

「対面での授業、訓練ができないのだから、学生たちを帰省させて他の大学のようにオンライン授業をやればいいのに、ただ敷地からの外出を禁じるだけの状況が続いた。学生たちは食事や清掃などの時間以外は自由行動でやることがない。『ウエストポイント(米陸軍士官学校)をはじめ、海外の士官学校などでは早い段階からオンライン授業が行なわれているのに、なぜ防衛大でできないのか』といった不信の声が学生たちからもあがっているが、対応はなく、大学側への不信感が高まっている」

 防衛大の寮は、原則として上級生から下級生まで8人が一部屋に暮らしている。新入生のなかには、体験したことのない上下関係の厳しさに戸惑う者もいるといい、「1学年がストレスに晒されることを気にしてか、指導教官から『呼び出し指導(指導役の上級生が下級生を居室に呼び出して指導すること)』をやめるように指示があった」(前出の現役学生)という。授業や訓練がなく、ただ集団生活が続く状況では、下級生の心理的なプレッシャーが大きくなって当然だろう。

 しかも、集団生活の環境自体が「3密」に該当する懸念がある。大学側は一斉に摂っていた食事の時間を分散させ、1日2回の検温などで体調不良者を早期発見するといった対策を取っているというが、「食堂や浴場の利用時間がグループ分けされたものの、出入り口などで並ぶ時にかえって混雑しているという声も聞こえてくる。学生に感染者が出たという話こそないが、すでにPCR検査を受けた学生が数多くいる」(前出の防衛大関係者)といった状況があるというのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン