安達祐実は子役時代からスターだった
ドラマの中で「捨てる対象」として挙がるのが代表作のDVDの他に、心づくしの凝った手作り時計だったり、誰からも好かれたいという自意識だったり、元夫からの婚約指輪だったり。特に指輪の回は、あの芸人から贈られたものかとネットも騒然。
下田悠子さんの脚本が素晴らしく、セリフは説明的でなくてまるで詩のような余韻を残します。大九明子さんの演出もチャーミングで、遊び心に溢れた子役(川上凛子)の使い方、大胆なアップ画面、舞台のようなスポットライトの使い方も面白い。Vaundyによるオープニング曲と SpecialThanks のエンディング曲、すべてが心揺さぶる一つのパッケージとして結晶しています。
『捨ててよ、安達さん。』というタイトルの意味するところは、「簡単に捨てられないものがある」ということであり、「人は自分を縛るものからいかに自由になれるのか」がテーマです。
そう考えてみると、安達さんのように「重たすぎて捨てにくい過去作」を持つ役者さんって……例えば『おしん』の小林綾子さんとか『金八先生』の武田鉄矢さん? 多くは思い浮かばない。誰もができるような安易な設定ではない、ということでしょう。
毎話の最後に「この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係がありませんが、実在する安達祐実と少々関係がございます」の文字が映し出されて笑ってしまいます。このドラマは今話題のリアリティーショーの、いわば肯定的側面として成功した事例と言えるのかもしれません。パロディと哲学と絵本を掛け合わせたみたいなみずみずしい世界に思わず「負けるな、安達さん!」と心の中で叫んでいる自分がいます。