一方、建築現場での人手不足も慢性化している。特にマンションの大規模修繕のために必要な足場の組み立てや解体を行うとび職などは、10年ほど前から高騰した人件費が高止まりしたまま。現場の職工さんたちの高齢化も進んでいる。そのため、マンション修繕工事のコストは年々上昇を続けている。それを賄うことになる修繕積立金が値上がりするのは当然だ。
しかし、もう築20年を過ぎたマンションでは、新築時に購入した人が高齢化していることが多い。彼らの収入がか細くなっていると、管理費や修繕積立金の値上げなどを受け入れにくい。総会に値上げ案を出して、否決されるケースもよく見られる。
そうなると管理業務の一部に支障をきたしたり、必要な補修ができなくなったりする。分譲マンションの区分所有という権利形態が持つ大きな問題である。
管理会社は、そういった遠い未来の問題をも見越しているのかどうか、新築マンションの管理費や修繕積立金は高めに設定しようとしている。少なくとも、今後下落に転じるような材料はほとんどない。コロナ不況で失業者が増えると、管理員の募集業務が若干やりやすくなる程度である。
現状、郊外の駅から離れた戸建てに住むリタイア夫婦が、便利のいい場所の中古マンションに住み替えるというトレンドも見られるが、彼らは区分所有のマンションに住むランニングコストを現実的に想定していない場合も多い。
しかし、戸建てではかからなかった月々の管理費や修繕積立金はもちろん必要だ。自家用車を持ったままにすれば駐車場の使用料も発生する。そして、そういった費用は時に値上げされる。
大規模修繕などで積立金が不足した場合には、追加で一時金を徴収されることもある。管理組合の総会で一時金徴収案が可決されてしまえば、すべての区分所有者には法的な支払い義務が生ずるのだ。払えなければ住戸を競売に掛けられる可能性だってある。
マンションの管理費や修繕積立金といったコストは、これまで総じてあまり高くなかったために、軽く見られていたように思う。しかし、今後はそのマンションを借りた場合の家賃の3割程度にまで、管理費関係のコスト割合が上昇していくと考えるべきだろう。
区分所有のマンションは、それだけ日常経費が高コストな住まいに変わりつつあるのだ。