国内

天才の原石“ギフテッド” 基礎学習に使う時間短く議論好む

アインシュタインのようにIQが高いだけではなく偉大な業績を上げた人も(写真/GettyImages)

 高いIQを持ち偉業を成し遂げた人を天才と呼ぶならば、その“原石”といえる人たちがいる。「ギフテッド」と呼ばれる人たちだ。ギフテッドは“天から才能を授かった人”を意味する。おおよそIQ130以上という高い知能や才能を生まれつき持つ人を指し、その人数は諸説あるが「人口の約2~5%」といわれる。全人口の約70%はIQ85~115の間に収まるとされるので、ギフテッドがいかに高い知能を持つかがうかがえる。

 米シリコンバレーにある「ヌエーバスクール(以下、ヌエーバ)」は、そんなギフテッドを対象にした学校、いわゆる「ギフテッドスクール」の1つだ。ギフテッド教育の専門家で、ヌエーバで15年にわたって日本語を教えてきた川崎由起子さんは次のように言う。

「ヌエーバは1967年に創立された、ギフテッド教育の先駆けといえる存在です。入学できるのは、IQが135以上と認められた子だけ。1学年18名の定員に100名以上が応募するため、“ハーバード大学よりも厳しい競争率”といわれています」

 ヌエーバのようなギフテッド教育(才能教育)で先行してきたのはアメリカだという。才能教育の第一人者で、関西大学教授の松村暢隆さんが解説する。

「20世紀の初め頃にアメリカが才能教育に取り組み始め、20世紀後半になって世界でも活発化してきました。その背景にはアメリカと旧ソ連を巡る東西冷戦があります。ソ連が世界初の人工衛星の打ち上げに成功したことで、アメリカは“ソ連に負けるな”と国をあげて才能教育を活発化させたのです」

 アメリカでは1978年、才能教育の対象となる「才能児」が法律によって定義付けされた。「知能、創造性、芸術、リーダーシップ、また特定の教科が著しく優れた能力がある子」だという。才能児には、普通の学校のカリキュラムではない特別な才能教育が行われるようになっていった。そうした動きはやがて、世界全体へと広がっていく。

「中国や韓国、シンガポールでは“国家に役立つ人材養成を目指す”という教育理念のもと、才能教育が行われています」(松村さん)

 ヌエーバのようなギフテッドスクールはその代表例だ。

「ヌエーバではさまざまな分野の次世代のリーダー育成を目指して、才能教育が行われています。制服もチャイムもなく、席も決まっていない。生徒の自主性に任せた校風です。時間になれば生徒は教室に来て、好きな場所で自由に勉強します。

 国語や数学などの基礎学習も行われますが、得意な教科があれば先に進めるようにマンツーマンで教えるなど“得意を伸ばす”教育が重視されています」(川崎さん・以下同)

 そうした教育方法を取ることで、通常のカリキュラムよりもずっと短い時間で学習を進められるようになるそうだ。

 そもそも、ギフテッドは記憶力が高く、基礎学習に使う時間が非常に短いという。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン