一方、優秀な書き手であったマルクスの妻や科学者であったアインシュタインの妻は、結婚後、自分の仕事をあきらめ、内助の功に徹する。そうすると世間からは賢妻などと言われるが、はたして本人たちは幸せだったのか。逆に、高名な神学者カール・バルトに公式の場でも研究のパートナーとして謝辞を送られたキルシュバウムのような女性もいるが、彼女は生涯、バルトの妻にはなれず、なんと彼が家族と暮らす家の納屋で仕事に専念し続けた。
いまはずいぶん状況が変わり、活躍する妻を支える夫もめずらしくなくなった。それでもまだ自分を犠牲にして夫に尽くすのが“妻のかがみ”と思っている男性もいるはずだ。あなたは妻を、本書に出てくる「自分の夢や能力を押し殺して生きた女性たち」のようにしていないか。「耳が痛い」などと言わずにぜひご一読を。
※週刊ポスト2020年7月3日号