彼らは農民習俗やその精神史の研究に熱心であった。ちなみにヒムラーも農学士であったという。それは柳田民俗学が農政学から出発して農民研究へと移行していった点と重なる。結局、ヒムラーとダレは離反し、アーネンエルベはオカルティズムや擬似科学、陰謀史観の宝庫の組織として暴走していく。

 しかし、この書評を読んだくらいでは、この組織の実在と政治への関与が俄に信じがたい人も、現在の与党の議員やその周辺(例えば安倍昭恵)に疑似科学や陰謀史観が、都市伝説でなく現実として蠢いていることはいくばくか目に入っているはずだ。それをフィクションの中で弄び嗤うことができず、現実への侵入を許す、特にweb以降に顕著な「現在」とは一体、何なのか。それを考える意味で、正しく読まれるべきタイミングでの出版である。

※週刊ポスト2020年6月26日号

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