芸能

春風亭百栄 異色の人情噺『露出さん』を配信する心意気

春風亭百栄の魅力を解説(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、有料とはいえ配信というオープンな形式で異色の噺を選んだ「春風亭百栄独演会」についてお届けする。

 * * *
 5月に引き続き、6月も僕は連日オンライン配信の落語会を視聴していた。これが可能になったのは「道楽亭ネット寄席」が始まったことが大きい。新宿二丁目の道楽亭は50人も入れば超満員の小さなイベントスペースで、2010年にオープンして以来ほぼ毎日落語を中心とする演芸ライヴを開催してきた。

 4月から休業していた道楽亭が無観客有料配信の「第1回道楽亭ネット寄席 三遊亭天どん独演会」を行なったのは5月9日のこと。以降16日「三遊亭遊雀独演会」、17日「古今亭文菊独演会」、18日「蜃気楼龍玉独演会」と続き、すべて視聴した。

 次に観たのが21日の「春風亭百栄独演会」。この日、百栄は『浮世根問』『寿司屋水滸伝』『鼻ほしい』『露出さん』の4席を演じた。

 百栄の『浮世根問』は隠居のノリツッコミが可笑しい。『寿司屋水滸伝』は柳家喬太郎作品を独自にアレンジ、完全に自分のものにしている。『鼻ほしい』は廓遊びで鼻が欠けた浪人の噺で、古典だが現代の感覚だと差別的に聞こえるためか、今は百栄ぐらいしか演らない。

 嬉しかったのは『露出さん』を演ってくれたこと。夕暮れ時の街角でいきなり娘たちの前に現われコートの前をはだけて裸体を見せつける露出狂生活を25年間毎日続けている男が、すっかり町に馴染んでしまって今ではむしろ人気者、という噺。今や巡査もこの「露出さん」をノラ犬ならぬ「ノラ人間」として放置している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト