この辺りから、日本のファッション市場、特にギャルファッション業界の勢いが目に見えて消えていった。ファッションで勝負するよりも、いかに安く作れるか、多く売れるかで物事が判断され始めたのである。
時を同じくして海外発の安価な「ファストファッション」ブランドが注目され始めると、数年後には渋谷や原宿に日本旗揚店が続々オープン。高級ファッション誌もギャル雑誌も、こうしたブランドをこぞって取り上げ、日本国内でもファストファッションブームが巻き起こった。個性的で、世代を絞ったブランディングに特化し、かつてのギャルたちがこぞって身につけたファッションブランドは次々に倒れていった。現役スタイリスト・玉置なるみさん(仮名・40代)がいう。
「子供からお年寄りまでが安価でシンプルで、同じような服を着て、まるで制服みたいだなと思います。が、この流れには抗えない。ある程度機能的で安価なら、それさえ使っておけば、身につけておけば良いという雰囲気。ファッションという概念が消えかかっているような気さえする。無駄はどんどん削られ、遊びや余白が全く受け入れられない」
玉置さんもまた、先細りするファッション業界に未来を感じられず、近く廃業する予定だという。筆者の周囲でも、アパレル関係者が続々業界から去り始めた。
新型コロナウイルスの感染拡大による経済的打撃がとどめになったとはいえ、遅かれ早かれ訪れていたであろうこの事態。予想外だったのは、まだまだ生き残るはずだったファストファッション業界までもが甚大なダメージを受け、瀕死状態にあるという事だろうか。ファッションとはそのまま「余裕」であると思うが、世の中にファッションが求められない、必要とされていないように感じる今の有り様は、何を物語っているだろうか。