子供虐待防止を呼びかける「オレンジリボン運動」(時事通信フォト)

子供虐待防止を呼びかける「オレンジリボン運動」(時事通信フォト)

 S子を庇うのは、S子に可愛がられたという後輩だけではない。高校時代の友人も、S子にはよいイメージしかないと強調する。

「S子はSNSに、子供との写真を頻繁にあげていました。以前は、離婚したと思われる男性の写真もあった。このアカウントは鍵付きで外からは見られません。S子は鍵のついていないオープンなアカウントも持っていて、そちらは確かに遊びの写真ばかりだったから、ネットの情報しか知らない人たちは文句を言っている。でも私たちは、相変わらず優しくて可愛くて、子育ても頑張りモテてるんだろうと思って見ていた」(S子の地元・宮崎県在住の高校同級生)

 実際、S子が愛娘に手を挙げた形跡はない。だが遺体で発見された時、子供の胃は空っぽだったというから、暴力を伴う「虐待」ではなくネグレクト、育児放棄だったのだろう。もちろん、ネグレクト自体も「虐待」そのものである。それでも、彼女は決して冷酷な人間ではなかったと高校時代の同級生が続ける。

「S子本人は自分の育った環境のことは言わなかった。いまこうやって子供時代に虐待されていたと聞いて、彼女のこれまでのことを思い出しても、暴力的な一面は見たこともない。本当に大切に子育てしていました。ただ、彼氏や気になる男性ができた時、少し不安定になっていた部分はあったかもしれない。人への気遣いはあったが、自分のこととなると、周りが見えなくなるような…」(S子の地元・宮崎県在住の高校同級生)

 愛娘が亡くなった時も、S子はかつて職場の同僚だった男と共に、鹿児島に滞在していた。リアルで彼女と接していた人に対しては、思いやり深さや面倒見の良さを発揮しているから、まさか子供を放置しているとは想像もつかなかったことだろう。いったい、どちらがS子の本当の姿だったのか。おそらくどちらもS子そのものだったはずだ。人間は矛盾した内面を抱えながら、どちらとも付き合いながら生きるものなだから。ところが、同級生が感じていた「不安定さ」ゆえに、S子は自分のなかをシンプルな愛情で満たそうとし、娘を育てることと、新たなパートナーと親密になることの両立を妨げたのか。

 自分が愛されなかった分、娘を愛そうと懸命に努力をしたS子。ただ、自身が愛される機会があると自分を見失うほど喜び、そこに依存しすぎて自分から子へ愛をそそぐことを敬遠し逃げ出したのではと筆者は考える。同じような現象は、シングルマザーと子供、そこにシングルマザーの彼氏や夫が関与して起きた事件を取材している時、何度も確認した光景だ。子供を抱えて二人きりで生きざるを得なくなると、その直後のシングルマザーは人一倍、子供を可愛がり、育児に熱心になる。ところが、再び自分が愛される機会が訪れると、男に依存し翻弄され、子がおざなりになって悲劇へと転がり落ちる光景を何度見たことだろうか。虐待事件には至らなくても、似たような経過を経て親子関係を壊してしまった事例は多い。

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