国内

育児放棄の母親をただ罵倒しているだけでは悲劇は防げない

SNSだけでどんな母親だったか判断できるはずがないのだが

SNSだけでどんな母親だったか判断できるはずがないのだが

 幼い子供が虐待によって死亡する事件が起きるたびに、保護者(多くは母親)への非難の声が高まる。ネット、とくにSNSでは、攻撃してよいと認められた相手が現れたとばかり、親のSNS履歴などを勝手に解釈して非道な人格をつくりあげ、罵詈雑言をわめきちらす人たちが出現する。大田区蒲田で発生した保護責任者遺棄致死事件をきっかけに、ライターの森鷹久氏がSNSと現実との乖離と、無責任なSNS罵倒民たちについて考えた。

 * * *
 声すらあげられない小さな命の灯火が、また消されてしまった。

 わずか3歳の女児が食事も与えられず部屋に閉じ込められ放置された末に死亡した、東京都大田区蒲田で発生した事件について、区は検証チームを設置したと発表した。定期検診にも訪れなかった事を放置していたのではないか、さらには区の職員が自宅を訪ねたとき中に女児が一人でいたのではないか、といった行政への批判が相次いでいることを受けての対応と思われるが、被疑者である母・S子の生育環境についても議論になっている(S子については実名報道されているがこの稿ではS子と表記する)。

「S子自身も、ネグレクト(育児放棄)や虐待を受けていたと週刊誌が報じました。あばら骨が浮くほど痩せこけていた、包丁で切りつけられた、などその内容は凄惨で、S子の両親は共に逮捕されていることが新聞記事でも確認されています。まさに負の連鎖、悪の再生産が起きたのです」(大手紙社会部記者)

 筆者は以前、子供への性犯罪とその負の連鎖について取材し、小欄で記事にしている。かいつまんで言えば、子供に性的被害を加えようとする大人自身が、実は過去には同様の被害にあっていたケースが目立つ、という傾向についてである。すべての虐待サバイバーが同じ事を繰り返すわけではないが、悪循環の例がいくつも確認できてしまうため、よく言われるように筆者もそれを「負の連鎖」と表現した。

 今回も「ネグレクトや虐待を受けていた母親が、自らの子供にも同様のことをやってしまった」という文脈で語られているが、違和感がある。被疑者であるS子は、ある一時期までは確かに、愛娘を可愛がり、人並み以上の愛情を注いでいたのである。

「S子は施設育ちとは思えないほど明るく、そして可愛くて、男女問わずモテた。ちょっと天然なところはあるけど、S子のことを悪くいう人間はこっち(宮崎)にはいない。子供もとても可愛がっていたし、虐待するなんて絶対にありえない」(宮崎在住のS子の後輩)

あわせて読みたい

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン