荒川の土手ロケには、近藤を一目見ようと早朝からファンが集まった(イラスト/なとみみわ)

 ところが、近藤の活躍で変わったのは、生徒たちの意識だけではなかった。

「その回以降、朝、荒川の土手ロケに行くと、6時半くらいから人影が並んでるんですよ。聞けば、近藤の人気がすごいことになってるって。最初は10人くらいだったのに、撮影終了の頃には、あの土手の道全部に女の子がズラーっと並んで(笑い)」

 ほかにも1人、近藤の成長に魅せられていた人物がいた。

「前半はひとり飛びぬけて演技がうまいために、周囲の学生たちとの距離が大きかった杉田が、近藤の回以降、楽しそうにクラスに溶け込み始めたんです。これはもう本当に驚きで。全員の意識の高まりでクラスに一体感が出たんでしょうね」

 実際、杉田は2017年11月28日に放送された情報番組『ビビット』(TBS系)に出演した際、いまでも近藤のことを役名の“清くん”と呼んでいると話し、「恋心まではいかないんだけど、かっこいいな~っていうのがあって」と告白。クラスに打ちとけていたのがわかる。

 1980年3月まで放送された金八先生の視聴率はうなぎのぼり(最終回は39.9%)。爆発的な人気を得た3人は同年5月、たのきんトリオを結成する。“たのきん”という名は、 ジャニー喜多川さんの発案だ。もともとこの3人をグループとして選抜したわけではなかったことから「悪ガキトリオ」「新々御三家」「金八トリオ」など、新聞や雑誌によってさまざまな呼称で呼ばれていた。田原は後に自著でこう語っている。

「たのきんトリオの響きはどこかおっちょこちょいなイメージがあり今でこそ言えることだけれど、僕個人はあまり嬉しくなかった」

 キラキラ王子様の田原らしい言葉だが、武田はそれがよかったのではないかと言う。

「“たのきんトリオ”って名前、力が抜けてますよね。彼らがお金持ちの子供が通う有名私立中学校出身じゃなくて、下町の公立校・桜中学から生まれたのもよかったんじゃないかな」(武田)

 下町生まれのスターの人気は、そこから加速し、社会現象と化していくのだ。

※女性セブン2020年8月13日号

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