1973年入社の神田正輝は、レストランで裕次郎にスカウトされたと伝えられている。『太陽にほえろ!』のプロデューサーだった岡田晋吉氏が言う。
「裕次郎さんは『あいつを何とかスターにしたい』と、神田さんに目をかけていた。彼の軽さやコメディタッチのセンスは『太陽にほえろ!』に新しい風を吹き込んだ」
裕次郎と神田の絆は深かったようだ。『太陽にほえろ!』で新人刑事“ロッキー”を演じた木之元亮も証言する。
「当時、神田さんと飲む機会がありました。印象に残っているのは『僕は最後まで社長についていく、何があっても社長についていく』と言っていたこと。裕次郎さんとの深い信頼関係を感じました。
裕次郎さんは軍団ではない我々にも優しかった。『太陽にほえろ!』では、七曲署のセットの前にいつもマイクロバスを改造したボス用の控室が停まっていて、出演者はそこに挨拶行く。ある日『ロッキー入れよ』と中に呼ばれたんですが、いつも緊張しっぱなしなのが伝わったのか、『これでも飲めよ』と缶ビールを開けて僕に渡すんです。朝の8時頃ですよ(笑い)。今の現場じゃ考えられないけど、男としてのスケールの大きさに感動しましたね。他の出演者たちも同じような経験をしているはずです」
石原軍団は餅つき大会や忘年会で、スタッフやメディアを盛大にもてなしたことでも知られる。裕次郎と渡の人間性が男たちを引き寄せたのだ。
※週刊ポスト2020年8月14・21日号