芸能

三浦春馬さん遺作ドラマ放送決定と松岡茉優の役者魂について

三浦春馬さんの演技力は進化を繰り返していた(時事通信フォト)

 早逝した才能を惜しむ声は消えることがない。それでも最後に取り組んだ作品が陽の目を見ることになったのは朗報だろう。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏がレポートする。

 * * *
 故・三浦春馬さんが出演予定だったドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系)。お蔵入りという形で封印されてしまう憶測が流れましたが、結局「4回完結」で9月に放送されることが決まりました。前代未聞のこの対処。三浦さんが「亡くなる前日まで撮影していたドラマを何とか見てもらいたい」という役者、脚本家、演出家、放送局ら制作陣の切実な思いと英断を、率直に讃えたいと感じます。

 才能溢れる三浦さんが突然去ってしまったことはあまりにも哀しく残念な出来事でした。繊細な精神と表現、そして大胆さが一人の中に混じりあった、希有な役者さん。『キンキーブーツ』という個性的なミュージカルではドラァグ・クイーン役を演じて徹底的に磨かれた身体と演技を披露し賞賛を集め、読売演劇大賞杉村春子賞を受賞しました。

 また、テレビドラマでも重要な役を数々こなして視聴者を魅了。難病患者や臓器提供者といった複雑な役にも果敢に挑戦した一方で、『オトナ高校』(テレビ朝日系)等でのコメディタッチ&風刺的ブラックユーモアもキラキラ光っていた。『世界はほしいモノにあふれてる』(NHK)の自然体MCとJUJUとの掛け合いも印象的。実にさまざまな面から期待を集めていた人だけに、ほんとうに無念です。

 その三浦さんが演じた新ドラマは、「清貧女」九鬼玲子(松岡茉優)と「浪費男」猿渡慶太のラブコメディ。たとえ数回分であろうと作品として放送されることになった背景には、オリジナルの書き下ろし脚本(大島里美)であること、そして何よりも主役・相手役の松岡茉優さんの意志が関係しているのではないでしょうか。

 松岡さんは自らパーソナリティーを務めるラジオ番組『マチネのまえに』(8月2日TBS)でこう語りました。

「私の個人的な気持ちとして1ヶ月と少し、相手役としてお芝居を受けていた身として、あの素晴らしい猿渡慶太(三浦春馬)という人物を皆様に見てほしいと思いました」「猿くんは彼しかいないなと思います」

 また遺作である以上、視聴者への配慮も欠かせない。松岡さんは「私たちはこの物語を全力で作っておりますが、もし受け取れないかもしれない、つらくて見れないかもしれないという方は、ご無理なさらないでください」とも言いました。

 ドラマが封印されることなく放送決定となったことで、新たに2つの現実が生まれることになるでしょう。

●演じる仕事を通して三浦春馬が表現しようとした、直近の姿を知ることができる
●三浦春馬に対する記憶が自死に留まらず演技そのものによって結実する

 今回の出来事を通して相手役・松岡茉優という人の芯の強さと役者魂もかいま見えたように思います。他の人を配慮し思いを馳せながら、自分の思いにも逃げずに向き合う。そうした力量は、役者である以上、演技を通して表現され続けていくことでしょう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン