国内

池田勇人元首相の所得倍増計画 東京五輪と貿易自由化がテコに

1964年には東海道新幹線が開通(写真/共同通信社)

 安倍晋三首相は憲法改正や安全保障では祖父の岸信介首相を“お手本”にしながら、経済政策は祖父のライバルだった池田勇人・元首相の「所得倍増計画」を真似した。その池田は東京五輪、首都高、新幹線など、派手な公共事業のイメージが強いが、そこにはある信念があった。政治ジャーナリスト・武冨薫氏がリポートする。(文中一部敬称略)

 * * *
 池田の所得倍増計画は、農業の近代化から、産業配置や道路や鉄道、発電所などのインフラ整備、住宅政策、社会保障とそのために必要な予算までが緻密に組み立てられ、日本の経済社会構造を「復興から成長へ」と転換させる長期計画だった。

 その大きな柱が、戦後の国土計画の骨格となった「全国総合開発計画」(1962年)だ。

 東京(京浜)、名古屋(中京)、大阪(阪神)、北九州を結ぶ「太平洋ベルト地帯」に重化学工業地帯を形成するプランで、この4大工業地帯の周辺に鉄鋼、石油化学コンビナート、発電所がつくられた。池田時代に東名、中央などが次々に着工されてベルト地帯を結ぶ高速道路網が広がり、東海道新幹線の建設が進んだ。

 開発のテコとなったのが1964年の東京五輪だった。五輪の開会式を控えた10月1日には、羽田からメーンスタジアムの国立競技場に近い渋谷まで首都高が開通し、同日、新幹線が開業した。

 池田は明確に、五輪は日本を「復興から成長」へと向かわせる仕掛けだと位置づけていた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン