真正面からの「好きな作家」ランキングをあげるなら、三島由紀夫、太宰治、夏目漱石、谷崎潤一郎、川端康成、大江健三郎、堀辰雄といった物語る力をもった作家が思いつく。だが、ほっとけない作家ランキングというのは、第一候補ではないけれど、やっぱり好きなんだよなという作家である。むしろ、好きな作家より思い入れは強いと言えるかもしれない。

 その1位は『堕落論』の坂口安吾。2位は堀田善衛。堀田善衛は、蓼科に山荘を持っていた。夏にはよく遊びに行き、書斎に上げていただいて、どんなことを考えているのか話をうかがったことがある。それをきっかけに堀田善衛の本は全部読んだ。『若き日の詩人たちの肖像』は大好きな作品だ。

 3位は芥川龍之介。4位は安部公房。5位は丸山健二。6位は中上健次。『千年の愉楽』は何度読んでもすごい。7位は藤沢周平。

 8位は檀一雄。代表作『火宅の人』の「恵子」は新劇の女優・入江杏子さんがモデルといわれている。以前、ピースボートに乗ったとき、偶然、入江さんも乗船されていて、檀一雄の話を聞いた。入江さん自身も檀一雄のことを本に書いている。不思議な男だったようで、そこらじゅうでモテたようだ。火宅の人なのに、家へ帰っても家族から愛されていたという。

『火宅の人』にこんな言葉が出てくる。「どのような不埒な生き様であれ、絶えず己の頂点にあり、絶えず己に指令している人生でなかったら何になろう」

 さすが最後の無頼派と言われるだけある。家庭と好きな女との間でぐちゃぐちゃになっても、自分の業を抱え込んで生きている。

 ほっとけない作家9位は、井出孫六と井上ひさし。井上ひさしは、権力に対しても、言うべきことを言う生き方が好きだった。直木賞をとった『手鎖心中』もいいが、ぼくは『父と暮せば』がお気に入り。

 7月下旬、山形の井上ひさしゆかりのホールで、ジャズシンガーの中本マリさんとジャズ&トークのイベントを行った。久しぶりの講演だったが、中本マリさんにとっても久しぶりのライブとなり、感極まる場面もあった。

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