大阪の不動産バブルが遅れてやってきた理由
不動産価格の高騰を続ける東京の都心や湾岸というのは、マンション市場全体から見れば特殊性がある。
まず、都心エリアの新築マンションは、値上がり期待の思惑買いが発生しやすく、転売目的の購入が全体の半数近くを占めているケースもある。だから、市場が値上がり基調の時には割高感があっても売れてしまう、それがまた市場を押し上げる効果を発揮する。
湾岸エリアで供給されるのは主にタワーマンションであり、これを買う層はニューカマーのプチ成功者たちである。彼らは自らのささやかな成功の証としてタワマンを購入する。売り主側も湾岸のタワマンに関してはターゲット層が“見栄っ張り”であることを想定したプロモーションを仕掛けている。その結果、多少高くなっても売れてしまう。だから、東京の都心や湾岸では本来の「住む」というニーズとはやや性質の異なった買い方がなされているのだ。
大阪・梅田周辺の高層ビルやマンション(時事通信フォト)
一方、大阪のマンション市場では、そもそも価格に対する見方が厳しい人々が基本的なターゲット層である。値上がり期待の購入もみられるが、東京ほど多くない。
その要因のひとつに、東京人と大阪人の気質の違いがあるのではないかと私は考えている。東京人は見栄っ張りで外見の華やかさを重視する。そして、従順だ。世の中の大きな流れに対してあまり疑問を抱かないし、ましてやそれに逆らおうという発想が乏しい。マンションが高くなっても「今はそうなのだろう」という受け止め方をする。そして「高くても仕方がないか」と納得して、買える能力があれば買う。
しかし、大阪の人は自分が買えるかどうかよりも、そのマンションが公平に見て「高い」のか「普通」なのか、あるいは「安い」のかを重視しているように思える。時流に流されにくいのだ。
だから、それまでの市場よりも高く売り出されたマンションに対しては、「この前まで〇〇〇〇万円くらいやったのに……」と考え、購入を躊躇する。「ほんまに値上がりするんか? ちょっと待ったら下がるのと違うか?」という目で物件を眺めながら十分に吟味するのだ。
この気質の違いが、東京では局地バブルを発生させたうえでさらにそれを膨らませ、大阪では建築資材費や人件費のコストアップ分しか価格の上昇を受け容れずに今に至っている理由ではなかろうか。だから2013年以降に広がった局地バブルの波は、大阪に達するまでに5年以上かかったと私は見ている。
しかし、やっとバブル化したかなと感じ始めて1年ほど経過したときにコロナが発生した。当然、大阪人たちの値上がりマンションを見る目は厳しくなっている。今後はますます市場環境が厳しくなりそうだ。