国内

回復して終わりではない新型コロナ 後遺症こそが大問題

退院後、体調不良のためリハビリ施設で検査を受ける元患者(イタリア、写真/共同通信社)

「入院を必要としない軽症者でも、後遺症に悩まされる」──これは世界の研究者の共通認識だという。新型コロナウイルス感染症から回復した元患者の証言と、世界各国の研究を目にすれば、本当に怖いのは回復してから待ち受ける「後遺症」だということがわかるはずだ。

「『感染』と『回復』は、新型コロナウイルスについては、ごく一部の過程にすぎません。このウイルスに感染すると、もっと長期的な影響が体に起きると考えられています」

 そう指摘するのは、カナダ人のウイルス専門医で、オタワ大学医学部教授のマーク・アンドレ・ラングロワさん。人口約3800万人のカナダは8月末の時点で新型コロナの感染者が12万人に達し、死者は9000人を超えた。多くの感染者と死者を生んだカナダで研究を続けるラングロワさんは、「回復後」こそ注意が必要だと言う。

「私たちは政府の資金提供を受けて、500人の感染者の唾液と血液を用いて10か月間の経過観察を行っています。新型コロナの長期的な後遺症の原因を探るため、世界中の専門家がそうした研究を行っているのです。しかし、すべての後遺症に対応する治療法を確立するには、まだ時間がかかると思われます」(ラングロワさん)

 新型コロナは回復して終わりではない。すでに世界各国は、「その後」の対策を進めている。

 安倍首相が突然の辞任を発表した8月28日、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は、重症者や死亡者を抑制しながら経済活動を継続する方針を確認した。今後は、軽症者や無症状者は宿泊療養や自宅療養が中心となり、限られた医療資源を重症者に割り振ることになる。

 新型コロナは肺炎など呼吸器系の疾患を招き、感染者の80%が軽症もしくは無症状で、20%が重症化するとされる。重症者が肺炎などで命を落とすのを防ぐため、医療資源を重点的に投入しようというのが政府の考えだ。だがラングロワさんの指摘通り、今後の新型コロナへの対策は後遺症についても目を向けなければならない。イギリスのニュース専門局「Sky News」は7月にこう報じた。

《新型コロナウイルスは、単なる呼吸器系の病気ではなく、他のすべての臓器に影響を与える全身感染症である可能性がある》
《軽度感染者のその後の長期的な影響は、当初の予想よりもはるかに悪化する可能性がある》

 国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが指摘する。

「海外の報告からも、新型コロナは男女や年齢に関係なく、後遺症があると考えられます。海外では『ディレイド・パンデミック(遅延性の世界的流行)』との表現もあり、入院中の症状よりも回復後の後遺症の方が大きな問題になりつつあります」

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン