「でも、政権交代は遠のいた」
山口:どの角度から見ても、やはり次の政権は貧乏くじという印象が強いですね。
佐藤:次期政権は、こなすこと自体が難しい消化試合です。勝ち負けで言えば負けが決まっている。小泉政権後のように短命政権が続くとなると、その後は政権交代の可能性もゼロとは言えません。
山口:私は野党共闘の旗を振った張本人の1人ですが、安倍政権のもとで改憲が進むとか、安倍政治が悪いことをするということで、いわば「抵抗の論理」として進んできた経緯があります。本当に政権が取れるところまで国民を説得することは、正直詰めてこなかった面がある。安倍首相が非常に大きな敵でしたから。
佐藤:日本は資本主義国家ですから、経団連を敵に回す政党と組むと政権は取れないというのが私の考えです。共産党の力は認めた上で、共産党と立憲民主党が組む方向で国民民主党を吸収するという野党再編が起きたことで、政権交代が遠のいたようにも見えます。
山口:そうなると、しばらくは安定政権ができず、かといって政権交代も起きないという政治的混乱が続くことになりそうですね。
【プロフィール】
●さとう・まさる/1960年生まれ。作家、元外務省主任分析官。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在ロシア日本国大使館書記官、国際情報局主任分析官などを経て現職。著書に『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞)、『知性とは何か』など。
●やまぐち・じろう/1958年生まれ。法政大学法学部教授。東京大学法学部卒業。北海道大学法学部教授、オックスフォード大学セントアントニーズ・カレッジ客員研究員などを経て現職。専門は行政学、現代日本政治論。著書に『民主主義は終わるのか』、『政権交代とは何だったのか』など。
※週刊ポスト2020年9月18・25日号