芸能

底なしに暗い玉木宏の『竜の道』に仕込まれた「W松本効果」

番組公式サイトより

 放送回を追うごとに役者の魅力が様々な角度から伝わってきた作品である。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
『竜の道 二つの顔の復讐者』(フジテレビ系火曜午後9時)もいよいよ最終回(2時間拡大版)。原作は未完の小説だけに、ドラマで「どんな着地点が待っているのか」に関心が向かいがち。たしかに脚本も秀逸で説明的なセリフが少なくテンポも良く緊張感が漂う。でも、やはりこのドラマは「筋立て」に留まらない、さらに優れた見所があるのでは?

 コロナの影響で撮影が約2ヶ月中断したというこのドラマ。その間に一人一人の役者が、演じることの喜びや幸せを噛みしめ、役への想いや理解を深めたのではないでしょうか。魂のこもったキレ味ある演技は迫力満点。静かに目が語るシーン、言葉はなくても横顔が物語るシーンも多く、大人のドラマの風格をたたえています。そう、このドラマは役者に漲る緊張感と気迫こそ、最大の見所と言えるのではないでしょうか。

 物語は双子による復讐劇。顔も名前も変え裏社会に身を投じた竜一に玉木宏さん、弟で国土交通省の官僚・竜二を高橋一生さんが演じています。二人が世話になった養父母を自殺にまで追い込んだのが大手運送会社・キリシマ急便社長。悪役をやらせたら右に出る者はいないあの遠藤憲一さんが、冷血な社長を的確に演じています。

 キャスティングは万全の体制と言っていいでしょう。これら実力派俳優に加えて「W松本効果」という見所が仕込まれています。女優陣が効果的なアクセントになっているのです。

 まず、社長令嬢の霧島まゆみを演じる松本まりかさん。2000年に女優デビューし実に苦節20年近く。さまざまな仕事をこなしてきたけれど注目を浴びるまでにかなりの時間がかかったもよう。すでにNHK朝ドラの二作に出ているとは、失礼ながら存じ上げませんでした。ご本人いわく「売れないことに飽きた」。凄みすら感じるコメントです。

松本まりかは難役を好演

 その松本さんが演じる「まゆみ」という人物は、自己中でワガママで性格のねじ曲がった性悪の令嬢……と思いきや、ふとした折にのぞかせる「純な」顔。復讐の目的で竜二はまゆみに接近、結婚してキリシマ急便を乗っ取ろうと画策する。

 仕組まれた関係に翻弄されていくまゆみ。次第に悪女のイメージが崩れていき、むしろ被害者、気の毒な哀しい人にも見えてくるから不思議です。弱さやおびえを含んだ複雑な表情を浮かべ変身していく瞬間こそが、ベテラン役者の技の見せ所でしょう。

 そもそもビジュアルからして「愛人風」「悪女」イメージにハマりやすいタイプの松本さん。しかし20年の溜めを一気に吐き出して演技の幅を思い切り広げて欲しい。復讐劇の結末にどんな顔を見せてくれるのか、期待が膨らみます。

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