根管治療に「マイクロスコープ」は必要か
虫歯が進行すると、感染が広がって歯根の先が炎症を起こす(根尖病変)。この状態で「抜歯」を宣告する歯科医もいるが、「根管治療」で歯を残せる可能性がある。
「根管治療」は、歯の根を通る根管内から感染した神経などをリーマー(またはファイル)と呼ばれる器具で除去して、消毒・封鎖する。根管の直径は1ミリ以下。しかも内部で複雑な形状をしているため、「指先の繊細な感覚」が必要となる。「手探りの治療」とも言われていた。
だが、最近では歯科用顕微鏡・マイクロスコープを使用して、根管内を目視しながら治療をするスタイルが、専門医の主流になっている。ただし、マイクロスコープの価格は、スタンダードタイプでも300万~500万円、トップランクのドイツ製は約1000万円。
マイクロスコープを使用するのは、必然的に治療費が高い、自費診療に限られている。保険の根管治療は、数千円から1万円。世界的にも「格安」の設定なので、マイクロスコープを使用すると、採算割れしてしまうのだ。
保険と自費の違いは、器具や薬剤にもある。別掲のレントゲン画像は、保険の根管治療で折れたリーマーが根管内に放置されていたもの。別の歯科医に発見されるまで、患者本人には知らされていなかった。
自費診療の歯科医は、折れるリスクを下げるため、リーマーやファイルを1回限りの使い捨てにしている人が多い。
ちなみに根管治療では、ラバーダムと呼ばれるゴムシートで歯の周囲を覆い、唾液の侵入を防ぐことで成功率が大きく変わるという。ラバーダムを使用しない根管治療は避けたほうがいいだろう。
※週刊ポスト2020年10月1日号増刊『週刊ポストGOLD 得する医療費』より