一方、首相自身、会見で具合が悪くなったと言っている割に、頻繁に会食を重ねている。実際に食事をともにした何人かに様子を聞いてみた。
「普段どおりというか、食欲はかなりあったよ。料理がひと通り出てきたあと、総理がシメに注文したのが天丼。そんなに大きなどんぶりではないけど、残さずペロリと平らげていたものね」
和食をともにした会食相手がそう言えば、洋食のケースでは次のような具合なのだ。
「総理はステーキが好きなんだね。前の週に銀座の『かわむら』を予約していたけど、キャンセルして食べ損ねたそうなんだよ。で、次の週、メインディッシュのステーキはどうされますか、と聞かれると、頼んだのがあっさりしたヒレではなくて、サシの入ったサーロイン。ふつうに150グラムを完食していた」
もとより新聞の首相動静はすべての動きをとらえているわけではない。確認できただけでもこの間、首相はさまざまな人たちと会食してきた。難病の再発という辞任会見を受け、会食ではほとんど料理に手をつけなかったという報道も少なくない。だが、アルコールまで口にしてきたらしい。
むろん調子のいいときも悪いときもあるだろう。半面、普通に会食できるなら、職務は続けられるのではないか。また国の首脳が職務を投げ出さざるを得ない重病が、なぜこうも簡単にマスコミに漏れてきたのか。それ自体、異常というほかない。
【PROFILE】森功(もり・いさお)/ノンフィクション作家。1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2016年に『総理の影 菅義偉の正体』を上梓。他の著書に『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』『ならずもの 井上雅博伝 ヤフーを作った男』など。
※週刊ポスト2020年10月2日号