千葉:繰り返しの中で折れない心を持って挫けることのない、ニーチェの言う“超人”ですね。夢中になって同じ遊びを繰り返した子供時代のような純粋な気持ちを、私たちも忘れずに持っていたいものです。そのおばあちゃまの感性がきっと山を呼んでいるんでしょうね。
室井:そうですね。山じゃなくても、1つでも、自分のために何かをするのはいいことだなって思いました。私は「やりたいことは全部やる」をポリシーにしているんですが、明日はこれをしてみようかなと思うことが1つでもあると気持ちに張りが出ると思う。くだらないかもしれないけれど、銭湯までの道をいつもと変えてみるだけで見たことのない道端の花や、個性的な家を見つけて意外に面白かったりもしますし。
千葉:誰の役に立たなくても、いい意味での自己満足を追求してみる。
室井:それでいいんですよね。
千葉:いまは1億総ツッコミの時代でちょっと個性のある生き方をするとすぐに“おいおい”と茶々が入りますが、人にツッコんでいるうちは半人前。私は自分の生き方を大切にする、ツッコまれる側の人間に魅力を感じます。自分のやるべき生き方が見つかれば、どんな困難にもめげずに生きていけるはずですから。
【プロフィール】
室井滋/むろい・しげる。富山県生まれ。女優。エッセイ、絵本も数多く出版し、本誌で「ああ越中ヒザ傷だらけ」を隔週連載中。本連載をまとめたエッセイ集『ヤットコスットコ女旅』は現在6刷を数えるベストセラーになっている。
千葉公慈/ちば・こうじ。1964年生まれ。曹洞宗宝林寺住職、東北福祉大学学長。『お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺』などに出演。『うつが逃げだす禅の知恵』『眠れなくなるほど面白い 図解日本のしきたり』(監修)など著書多数。
撮影/政川慎治
※女性セブン2020年9月24日