人生経験を重ねた高齢者こそ川柳を楽しめる
川柳は俳句と並んで世界一短い定型詩。俳句より自由度が高いとはいえ難しそうだ。
「うまく五七五にできない人には、まず題材として気になるものや気持ちを、箇条書きでどんどん書き出してみることをおすすめしています。料理にたとえれば、食材を並べてみる感じ。そこから取捨選択していくのです。慣れてくると今度は“句を詠む眼差し”で周囲を観察できるようになり、部屋の中でも窓の外でも、また自分の心の中の風景も、輝いてよく見えるようになります」
特に高齢の男性は自分の内面を見せるのが苦手だというが、川柳の力はそんな心も滑らかにする。
「以前、私の川柳教室に参加されていた高齢男性陣は、最初は新聞の見出しのような時事ネタの句ばかりだったのですが、いつの間にか、若い頃に行った海外の景色や宇宙に抱く憧れを表現されるようになりました。普段は口数少なく頑なでも、川柳の中では自由なのです(笑い)」
これも自分と向き合い、言葉を選んで五七五に集約する賜物だという。会話ではわからないその人の世界が、川柳を通じて感じられる。ひとつのコミュニケーションツールともいえるのだ。
「私は恋愛の川柳を詠み始めてから20年余り。現在進行形だけでなく、振り返ってみた恋もまた別の味わいがあり、詠み応えがあります。年を重ねるってこういうことですね。
高齢のかたがたはもっとたくさんの蓄積があると思います。出会った人やうれしかったこと、悲しかったこと、恋も。ぜひ時間をかけ、振り返ってみた“いまの気持ち”を川柳に詠んでみてください」
【プロフィール】
やすみりえ/大学卒業後、恋をテーマにした川柳が幅広い世代から共感を得る。多数の公募川柳の選者・監修を務めるかたわら、講演やワークショップで言葉の魅力を伝える。東京川柳人協会・全日本川柳協会会員。日本民間放送連盟賞特別表彰部門審査員。
※女性セブン2020年10月8日号