ハマっ子に親しまれた“ザヨコ”が閉館
一方で、旺盛なインバウンド需要に支えられていた横浜のホテルでさえも、先行きを不安視する声が強くなっていた。そうした中でのコロナ禍は、横浜のホテルへも多大なる影響を及ぼした。特に経営難で苦しんだのが、みなみらい・関内地区のほかに横浜の観光を語るうえで欠かせない「山下地区」のホテルだ。
山下地区は世界的なチャイナタウンである中華街を擁し、元町や山手なども隣接するまさに港町横浜らしい歴史と文化を感じるスポットが点在する。そんな華やかな観光ゾーンというイメージとは裏腹に、みなとみらい地区と明暗を分けてしまった。
中華街側の大通りである通称“コンテナ街道”周辺にもホテルは点在するが、山下地区のホテル立地で一等地といえば山下公園に面する「山下公園通り」である。客室の窓から港を望むロケーションは旅情という点でも雰囲気抜群。そんな山下公園通りに面して、伝統的な4軒のホテルが存在感を際立たせ、いずれも人気を博していたが、そんな“港ヨコハマ”“山下公園”の神通力もコロナ禍には及ばなかった。
筆者にとってメディアを賑わしたカハラ開業ニュースよりも衝撃的だったのが、ひっそりと報じられた山下公園通りホテルの閉館だ。コロナ禍の直接的な影響で2軒が閉館し一気に半減してしまったのだが、そのうちの1軒が「ホテルモントレ横浜」である。
5月末にひっそり閉館した山下公園前の「ホテルモントレ横浜」
ハマっ子にはお馴染みかもしれないが、元々は1979年開業の「ザ ホテルヨコハマ」。“ザヨコ”の名で親しまれたホテルは、当時長野に在住していた幼き筆者にとってもテレビのお天気カメラでお馴染みのホテルでもあった。
横浜に憧れを抱かせる存在でもあったザ・ホテルヨコハマは、同じく山下通りに面するクラシックホテル「ホテルニューグランド」のような圧倒的な存在感や華やかさはなかったが、いぶし銀の存在でハマっ子に親しまれていた。
横浜・山下地区にある伝統的なホテルは「ホテルニューグランド」を含め2軒だけに
2003年に外資系の「ザ ヨコハマ ノボテル」にリブランドされ館内はスタイリッシュにリニューアルされ、2006年には「ホテルモントレ横浜」となった。インテリアや客室面積、駐車場の使いやすさや料金体系など、個人的にはノボテル時代から通算50回以上は訪れているお気に入りホテルだっただけに残念なニュースであった。
筆者も50回以上は訪れたという「ホテルモントレ横浜」の客室