これらの大半は番組を盛り上げるための演出であり、彼らは計算できる存在としてキャスティングされていることがわかるでしょう。東大王のメンバーは、徐々に顔と名前が知られはじめたことで、個々でも“学歴・知識・教養を感じさせられるタレント”として成立するようになっているのです。
これまで、そのようなポジションは高学歴のインテリタレントが担っていましたが、視聴者志向が変わり、より本物を求めるようになりました。よりクイズが強い人、より学歴・知識・教養のある人を選ぶようになり、東大王のメンバーはぴったり当てはまるのです。
9月24日放送の『プレバト』で鈴木光さんが俳句コーナーの大将格である梅沢富美男さんを破って盛り上がるシーンがありました。「限りなく一般人に近い彼らが百戦錬磨のタレントを打ち破る姿が爽快感を与えている」という側面もあるのでしょう。
芸能事務所にとっても魅力的な存在
現在の活躍は、初代大将である伊沢拓司さんの存在が大きいのは間違いありません。伊沢さんは東大王チームを卒業したあと、『林修の今でしょ!講座』(テレビ朝日系)、『アイ・アム・冒険少年』(TBS系)にレギュラー出演しているほか、さまざまな番組にゲスト出演。さらに情報番組の『グッとラック!』(TBS系)のコメンテーターを務め、10月3日に生放送される『オールスター感謝祭』(TBS系)にも出演するなど、この一年あまりで飛躍的にテレビ出演が増えました。
伊沢さんは恩師である林修さんも在籍する芸能事務所・ワタナベエンターテインメントに所属。落語家の立川志らくさん、棋士の加藤一二三さん、バイオリニストの木嶋真優さんなど文化人タレントの活躍が目立つ事務所であり、現役東大王の鶴崎さんと林さんも所属しています。
伊沢さんが切り拓いた道を鶴崎さんと林さんが歩んでいるとともに、砂川さんも芸能事務所・プラチナムプロダクションに所属していることから、芸能事務所にとっても東大王は魅力的な存在である様子がうかがえます。
現在は『東大王』を放送しているTBS系の番組出演が多いものの、その好感度と人気を踏まえると、さらに他局の番組出演が増える可能性は高いでしょう。ただ学生であり、賢明な彼らが「タレント活動をどこまで本格化させるか」と言えば疑問が残りますし、テレビにこだわらずYouTubeなどの活動を重点化していく可能性も考えられます。
大半のタレントが貪欲にテレビ出演を求める中、それにこだわらない彼らは視聴者にとって異色であり身近な存在。今年3月に番組を卒嬢して研修医になった2代目大将の水上颯さんのような「卒業して見られなくなってしまうかもしれない」というはかなさも含め、個々の活躍が目立つ理由は少なくないのです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。