トランプ大統領の選挙戦略は徹頭徹尾「攻撃型」である。4年前もそれで圧倒的劣勢から一気にヒラリー・クリントン氏を逆転した。アメリカのメディア関係者は、いまだ「トランプの奇跡」があるのではないかと可能性に注目している。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏がリポートする。
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バイデン前副大統領とトランプ大統領の支持率の差は、各種世論調査で軒並み10ポイント以上に開いた。普通に考えれば、1か月を切った段階でこの差があれば「勝負あった」と言っていいだろう。しかし、何があるかわからないのが「トランプの選挙」である。
フリー記者の友人であるマイケルと電話で話した。マイケルは、この数か月、大統領選挙を中心に取材活動を続けている。両陣営の動きについて、おそらくどんな日本メディアより詳しく知るジャーナリストの一人である。「どうやらバイデン勝利で決着がつきそうだ。アメリカの多数の有権者が望む結果になるだろう」と水を向けると、意外な言葉が返ってきた。
「おおむねその通りなのだが、私はもう少し様子を見たいと思っている。トランプにも、まだほんの少しチャンスがある」と言うのである。とても興味深い見立てだったが、筆者はマイケルに反対した。「もはや差が開きすぎた。トランプが何をしても、わずか3週間あまりではひっくり返せない。勝敗を分ける激戦州でもバイデンのリードは安全圏に入りつつある」と常識的な予測を投げかけると、マイケルは、「私も確固たる根拠があって言っているわけではない。しかし、これまで何度も大統領選挙を取材してきて、バイデンは勝利者の風格というか、雰囲気を持っていないと感じる。メディアにも人気はなく、エキサイトメントが感じられない。それは有権者を取材していても感じる。ただ単に、トランプを嫌う人たちがバイデンを支持しているだけだ。そんな人が大統領になるというイメージが湧かない」と、ベテラン記者らしい分析をして見せた。
確かに、バイデン氏がテレビや集会で演説していても、これまで大統領選挙を勝ち抜いたどの候補より、有権者の熱狂的支持は受けていない。少なくとも4年前のトランプ氏は、もっと支持者を熱狂させた。もしトランプ氏が順調に回復し、10月15日の2回目のテレビ討論会に元気な姿で現れれば、おそらく支持者の熱狂はバイデン氏の比ではないだろう。