いまライブ事業ができないことは大きな痛手でしょう。ところがBig Hitの場合は、コロナ以前から単なる芸能事務所という枠にとどまらずに、テクノロジーや IT ビジネス、BTSのSNS戦略などを幅広く多角的に仕掛けてきたことが、ここにきて功を奏しています。
2019年には人気ガールズグループのGFRIEND(ジーフレンド)が所属する事務所を、今年5月には日本でもいまBTSの次に人気が高いといわれる13人組ボーイズグループSEVENTEENが所属する事務所と合併して韓国芸能関係者をあっと言わせ、会社の規模を大きくしています。
2020年はBTSの『MAP OF THE SOUL:7』(426万枚)とSEVENTEENの『Heng:garae(ハンガレ)』(120万枚)のわずか22枚だけで上位10位のアルバム売上の53%を占め、会社の売上に大きく貢献しています」
Big Hitはさらにファンと直接対面するコンサート活動の代わりに、IP(知的財産)事業拡張をベースにした「間接参加型」の事業も成長しており、Big Hitがかねてより力を入れてきた事業分野で、2017年から2019年の間の収入が22.3%から45.4%と倍以上に増加している。
前出の慎氏は特に、「レーベルとビジネス、グローバルファンを結ぶBig Hitエコシステムの中心である独自のプラットフォーム『Weverse(ウィヴァース)』の存在が大きい」と言う。
「所属アーティスト全体を包括するファンクラブサイトのようなコンテンツです。それまではアルバムはレーベルからの収益、コンサートの収益はイベンターとシェア、CMやマーチャンダイジングはマネージメント収益、ファンクラブ事業、オフラインの直営店展開…とバラバラに進められていたものがすべてWeverseに一元化されていて、これにより世界中のファンを相手にグローバルビジネスを展開しているというイメージですね」