ライフ

『スマホを落としただけなのに』著者が語る江戸川乱歩の魅力

ミステリー小説の基礎を築いた江戸川乱歩(写真/時事通信社)

 名探偵・明智小五郎を生み出し、日本のミステリー小説の基礎を築いた江戸川乱歩。没後55年を経た今日でも、怪しく美しい乱歩の世界は多くの読者を魅了している。

 シリーズ累計97万部以上のヒットを記録し、漫画化・映画化も果たしたミステリー小説『スマホを落としただけなのに』や結婚相談所を舞台にしたヒューマンストーリー『私が結婚をしない本当の理由』の著者・志駕晃さんもそのひとり。

「ミステリー小説を書こうと思い立って様々な作品を読みあさった中で、最も感銘を受けたのが江戸川乱歩の作品でした。普通の生活のすぐ近くで、猟奇的でグロテスクな事件が進行する。そんな日常と狂気が紙一重であるという恐怖は、現代にも通じるのではないかと思っています。私の作品でも、江戸川乱歩作品のエピソードをモチーフにしたところがいつくかあります。例えば、『スマホを落としただけなのに』シリーズの最新作『戦慄するメガロポリス』で殺人鬼が美女を剥製にしようと画策するシーンは、『黒蜥蜴』を読んでいて思いつきました」(志駕さん、以下「」同)

 明智小五郎や怪人二十面相、少年探偵団らが活躍する長編小説が有名な江戸川乱歩作品だが、志駕さんは「乱歩作品は短編こそ面白い」と続ける。

「まず、『人間椅子』『妻に失恋した男』など、タイトルからして面白い。『どういうことなんだろう?』と気になってしまう。そして内容も短い中に謎があって、最後は必ず落ちがある。加えて、『まるで未来を予測していたのでは!?』と思ってしまうような時代を感じさせない新しさがある。例えば人形を愛する男の話『人でなしの恋』はいまのゲームやアニメのキャラクターに恋する若者のことを描いているようにも読むことができます」

 そんな乱歩愛に溢れた志駕さんが次に手がける作品は、『令和 人間椅子』。乱歩の人気短編小説『人間椅子』を現代版に翻案した未発表短編を、朗読劇という形で配信する。

「乱歩の作品の魅力は現代に読んでこそ伝わるのではないかと思います。多くの人があらすじを知っている乱歩の代表作である『人間椅子』を令和バージョンに1時間の朗読劇にアレンジしました。目で読む小説や、シーンを追ってゆくドラマや映画とは違い、朗読はダイレクトに物語が耳に入ってくる。違った面白さを感じてもらえるのではないか」

 朗読を担当するのは人気声優の伊東健人、佐藤聡美、南早紀ら3人。秋の夜長に配信される「令和の乱歩」、多いに注目を集めそうだ。

◇志駕晃
しが・あきら。1963年生まれ。明治大学商学部卒業。2017年、『スマホを落としただけなのに』で第15回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉を受賞し、デビュー。『女性セブン』誌上にてリアルタイム連載小説『彼女のスマホがつながらない』を連載中。

◇朗読劇『令和 人間椅子』、『人間椅子』
10月14日(水)19時からイープラスの配信システム「Streaming+」により生配信。朗読劇の後には出演者や志駕さんを交えたトークショーも行われる。翌日の15日(木)には、江戸川乱歩の『人間椅子』を中島ヨシキ、大空直美の朗読で、同じようにトークショーが実施予定。

関連キーワード

関連記事

トピックス

高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン