国内

「ディープフェイク動画」製作者の言い分と売買成立の現実

ありえなかった映像が技術の発達により実現、まるで本物のような完成度になりつつある

ありえなかった映像が技術の発達により実現、まるで本物のような完成度になりつつある

 技術の進歩は、多くの人々に新しい喜びをもたらすはずだ。ところが、それを利己的な理由で悪用して利益を得るだけでなく、法の整備が追い付いていないのをいいことに、悪いことはしていないし誰も被害者はいないと屁理屈を重ねる人たちがいる。ライターの森鷹久氏が、ディープフェイク動画を取り巻く困惑するしかない状況についてレポートする。

 * * *
 ディープフェイクとは、AI(人工知能)による「ディープラーニング(深層学習)」と「フェイク(偽物)」を合わせた造語だ。この「ディープフェイク」の技術を用いれば、例えば著名な政治家や芸能人に似せた映像を用い、実際には本人がやっていない過激な言動させたように見せ世論を誘導する、といったことも可能になる。

 アメリカではすでに、大統領や有名実業家のディープフェイク映像が出回り物議を醸していたが、日本で出回っている「ディープフェイク」は、そのほとんどがアダルト物だ。とはいえ、かつて流行したアイコラ、芸能人(アイドル)の顔写真だけをセクシーな写真に貼り付けた不自然さが残るものを想像し、そんな低いクオリティのものをまともに受け取る人は誰もいない、と思うのであれば、それは認識が甘すぎる。AIに表情などを学習させることで、偽動画とは思えないほど違和感なく仕上がるようになった。その完成度は年々高まっており、今では一見するだけで偽物か本物か、全く区別がつかないような偽動画まで出回っているのである。

 昨年6月、筆者は「ディープフェイク」のアダルト映像について記事に取り上げ、これからどんどん、そうした偽映像が世の中に出回って行くだろうと書いた。その際、ディープフェイクの製作者にも話を聞き、悪びれていない様子を記している。

 今回、アイドルの顔映像と、アダルトビデオの映像を使ってディープフェイクを作成したとして、日本国内で初めて逮捕者が出た。逮捕された男3人の罪状はアイドルの「名誉毀損」と、アダルトビデオの「著作権侵害」であり、容疑者のうち1人は、制作した映像をネット上で公開するなどして一年弱の間に約80万円の収入を得ていたという。

 事件を受けての見解を伺うべく、一年前に取材に応じてくれたディープフェイク製作者に改めて話を聞くと、開口一番「私は捕まっていません」と笑い、余裕を見せた。

「結局、ディープフェイクを作ること自体が違法というわけではないのです。名誉毀損にはなってしまいましたが、AIが描いたアイドルの顔は、AIがアイドルの顔パターンを何千、何万と学習し、オリジナルで描き出したもの。いわばイラストとか肖像画と何も変わらない。イラストがダメです、という判断はできっこないでしょう」(ディープフェイク製作者)

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン