家族の「コロナ後うつ」チェックリスト
うつ病に詳しい町沢メンタルクリニックの町沢静夫院長が語る。
「高齢者の場合、もともと心身に異常が出やすいものですが、ついつい耐えてしまうケースが多い。そこにコロナ禍で、“周りもみんな大変な時期だから”と、人に相談しづらい空気が醸成されました。家庭内感染を避けるべく、各々が自分の部屋で過ごし、家族内の接触が減ったという人も多いでしょう。こうしたことが重なり、家族の異変に誰も気付けないというケースが増えています」
A氏もまた、「いま思えば兆候はあったのに、見過ごしてしまった。なぜ声をかけられなかったのか」と肩を落とす。
このコミュニケーション不足は、友人、知人、さらには地域内の人間関係でも“病の沈黙化”に拍車をかけている。愛知県在住のB氏(68・無職)の事例だ。
「私は定年でリタイアしていますが、妻(61)は『働いているほうが楽しい』と言って、食品メーカー工場にパートに出ています。店が本格的に再開した8月以降、ようやく妻にもシフトが回ってくるようになりましたが、元気になるどころか、家でも無口になり、表情も乏しくなってしまったんです」(B氏)
妻は、パート先で休憩時間に友達とおしゃべりするのを楽しみにしていたが、職場からは「休憩室での会話はなるべく控える」よう通達。スポーツクラブにも通っていたが、「ジム内でもマスク着用」「会話禁止」が続いていたという。
「要するに、人との会話が極端に減ってしまったんです。9月からはパートもスポーツクラブも休みがちになり、抜け殻のようになってしまった。ある日、心配した妻のパート仲間が電話をくれたことがあったのですが、状況を説明すると、『そんなことになっていたなんて……』と絶句していました。いまは心療内科に通って、精神安定剤を処方してもらっています」(B氏)
【相談窓口】
「日本いのちの電話」
ナビダイヤル0570-783-556(午前10時~午後10時)
フリーダイヤル0120-783-556(毎日午後4時~午後9時、毎月10日午前8時~翌日午前8時)
※週刊ポスト2020年10月16・23日号
