ちなみに、わたしが好きな場面は、晩冬に豪華なアパルトマンでひらかれたパーティで、ザ・キュアーの「キリング・アン・アラブ」のイントロが始まったところに、黒い革のブルゾンを着たフーコーがエルヴェ・ギベールを伴って乗り込んでくるところ。それから、タクシーでバルトとフーコーに挟まれたアメリカの若い作家兼翻訳家がアワアワしながらなんとか話を合わせている、というバルトの死に際の回想。
「エーコ+『ファイト・クラブ』を書きたかった」と作者も言っているように、衒学ミステリだが、『薔薇の名前』のように難解ではないので、安心して楽しんでください。
※週刊ポスト2020年10月16・23日号