スポーツ

タイトル争いは投手より打者のほうが醜い争いになるワケ

野村vsスペンサーの三冠王争いは球史に残る戦いだった

 今年のプロ野球は、短縮日程だったにもかかわらず、すでにセ・パともに巨人、ソフトバンクが優勝決定を待つばかりになり、注目は個人のタイトル争いに移っている。『週刊ポスト』10月26日発売号では「醜いタイトル争い」の球界裏面史を掘り起こして特集しているが、そこで紹介されるエピソードは圧倒的に「打撃部門」が多い。これはなぜだろうか。

 打撃部門の三冠といえば本塁打、打率、打点だ。タイトルを争うような主力打者は毎試合出場するから、タイトル争いは日々めまぐるしく情勢が変化する。それだけに、シーズン終盤にタイトル争いが熾烈になると、候補の選手を抱えるチームは、ライバルの数字を上げないために、直接対決では敬遠を多発して数字を伸ばすチャンスを潰すといった醜い争いが頻発してきた。

 古くは1965年に南海の野村克也が戦後初の三冠王に輝いた際に、3部門すべてで争っていた阪急のスペンサーに対し、南海は直接対決で敬遠策を連発した。怒ったスペンサーはバットを上下逆に持って打席に立ち、外角高めの敬遠気味の球に飛びついて内野ゴロを打ったこともあった。

 投手部門の三冠は、防御率、勝利、奪三振だ。このうち防御率は、打者の打率と同様に上がりもするし下がりもするから、必ずしも登板機会が多ければ有利とはいえない。ここに「醜い争い」の余地はもちろんある。

 昨年のセ・リーグでは中日の大野雄大が2.58でタイトルを獲得したが、広島のジョンソンは2.59と、まさに“ハナ差”の初タイトルだった。もちろん本人に実力があったからではあるが、与田剛監督の後押しも大きかった。

 わずかにジョンソンに防御率で劣っていた大野は、シーズン最終盤、9月30日の阪神戦に先発。3回まで無失点に抑えて防御率を改善したが、まだわずかにジョンソンが上回っていた。そして4回、先頭の近本光司を一塁ゴロに打ち取ったところでギリギリ防御率トップに躍り出た。すると、与田監督がベンチから出てきて投手交代を告げたのである。5回まで投げれば自身4度目の2ケタ勝利が達成できるところだったが、タイトルを優先した温情采配だった。試合後、大野は「個人記録を獲るためにワガママを許してもらい感謝しています」とコメントした。

関連キーワード

関連記事

トピックス

独走でチームを優勝へと導いた阪神・藤川球児監督(時事通信フォト)
《いきなり名将》阪神・藤川球児監督の原点をたどる ベンチで平然としているのは「喜怒哀楽を出すな」という高知商時代の教えの影響か
週刊ポスト
容疑者のアカウントでは垢抜けていく過程をコンテンツにしていた(TikTokより)
「生徒の間でも“大事件”と騒ぎに…」「メガネで地味な先生」教え子が語った大平なる美容疑者の素顔 《30歳女教師が“パパ活”で700万円詐取》
NEWSポストセブン
ロッテの美馬学投手(38)が今シーズン限りで現役を引退することを発表した(時事通信フォト、写真は2019年の入団会見)
《手術6回のロッテ・美馬学が引退》「素敵な景色を見せてくれた」国民的アニメの主題歌を歌った元ガールズバンド美人妻の想い
NEWSポストセブン
《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
NEWSポストセブン
LUNA SEA・真矢
と元モー娘。・石黒彩(Instagramより)
《80歳になる金婚式までがんばってほしい》脳腫瘍公表のLUNA SEA・真矢へ愛妻・元モー娘。石黒彩の願い「妻へのプレゼントにウェディングドレスで銀婚式」
NEWSポストセブン
昨年10月の総裁選で石破首相と一騎打ちとなった高市早苗氏(時事通信フォト)
「高市早苗氏という“最後の切り札”を出すか、小泉進次郎氏で“延命”するか…」フィフィ氏が分析する総裁選の“ウラの争点”【石破茂首相が辞任表明】
NEWSポストセブン
万博で身につけた”天然うるし珠イヤリング“(2025年8月23日、撮影/JMPA)
《“佳子さま売れ”のなぜ?》2990円ニット、5500円イヤリング…プチプラで華やかに見せるファッションリーダーぶり
NEWSポストセブン
次の首相の後任はどうなるのか(時事通信フォト)
《自民党総裁有力候補に党内から不安》高市早苗氏は「右過ぎて参政党と連立なんてことも言い出しかねない」、小泉進次郎氏は「中身の薄さはいかんともしがたい」の評
NEWSポストセブン
阪神の中野拓夢(時事通信フォト)
《阪神優勝の立役者》選手会長・中野拓夢を献身的に支える“3歳年上のインスタグラマー妻”が貫く「徹底した配慮」
NEWSポストセブン
朝比ライオさん
《マルチ2世家族の壮絶な実態》「母は姉の制服を切り刻み…」「包丁を手に『アンタを殺して私も死ぬ』と」京大合格も就職も母の“アップへの成果報告”に利用された
NEWSポストセブン
ブリトニー・スピアーズ(時事通信フォト)
《ブリトニー・スピアーズの現在》“スケ感がスゴい”レオタード姿を公開…腰をくねらせ胸元をさすって踊る様子に「誰か助けてあげられないか?」とファンが心配 
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン