国内

60代の料理店主「グルメサイトは料理の上前をはねる存在」

望まなくてもグルメサイトに店の情報が載せられてしまう(イメージ)

望まなくてもグルメサイトに店の情報が載せられてしまう(イメージ)

 フランスに本拠地を置く世界的タイヤメーカー、ミシュラン社による「ミシュラン・ガイド」といえば、赤い表紙のレストラン・ホテルガイドがよく知られている。その調査員は匿名で、絶対に身分を明かさず、もし調査していることが店側に分かってしまった場合はガイドへの掲載が見送られると言われている。その調査員の気分を一般人が味わえてしまうのが、ネットのグルメサイトだ。俳人で著作家の日野百草氏が、今回は、グルメサイトと一部の客に困っている飲食店オーナーシェフの本音についてレポートする。

 * * *
「なに書かれるかわかりませんから、ご機嫌とるしかないですよ」

 もう20年以上通っているだろうか。最寄りは強いて言うなら四谷三丁目、それ以上は絶対教えたくない私の行きつけの店。年をとってもあのころから変わらずスマートでイケメンのオーナー(男性、60代)が私のテーブルに座る。ランチタイムもとうに終わり、いつも繁忙時間だけ手伝っている奥様も帰宅、店には私とオーナーしかいない。オーナーの愚痴が始まる。またコロナの話かと思ったら、某グルメサイトと一部の客に困っているという。

「席を減らしたからお客は10人が限界です。仕方なく断ることもあります。昔なじみの常連はともかく、グルメサイトを見て来られる方の中には不満な方もいるでしょうね」

 オーナーは常連にも丁寧な姿勢を崩さない品のある人だ。こだわりをもってこの店をやってきた。しかし頑固とか上目線ということは決してなく、ただ店のこだわり、それだけがオーナーのポリシーであるだけだ。4月からの一時期は緊急事態宣言もあって店を閉めたが、再開後は常連を中心に堅調だったはずだが、以前からグルメサイトに悩んでいたとオーナーは正直に話してくれた。

「書き込まれるの嫌ですね。細かいことであれこれ言われるのは気分のいいものではありません」

 書き込みの内容を書くと特定されるので書かないが、オーナーはグルメサイトの評価コメントが嫌いだという。というかネット嫌いである。若いころの一流店での修行を経て、60代までオーナーシェフとして生きてきた昔気質の料理職人だ。オーナーが愚痴る書き込み、ネットに慣れた側からしてみるとそれほど酷い書き込み、低評価というわけではない。むしろ高評価に基づくコメントのほうが多いが、理不尽なコメントが散見されるのも事実、ネット耐性のないオーナーには酷な内容だ。店が狭い、狭いからと外で待たされた ── そんなもの、この店を一目すれば当たり前の話で、文句を言われても困るだろう。食べた感想がないと駄目だが、取ってつけたようでも、それがあれば変な理屈も憲法21条「表現の自由」で許されるのがグルメサイトだ。

「気にするなと言われても、どうしても気になってしまうんですよね」

関連キーワード

関連記事

トピックス

田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(中央)
《父・修被告よりわずかに軽い判決》母・浩子被告が浮かべていた“アルカイックスマイル”…札幌地裁は「執行猶予が妥当」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま入学から1か月、筑波大学で起こった変化 「棟に入るには学生証の提示」、出入りする関係業者にも「名札の装着、華美な服装は避けるよう指示」との証言
週刊ポスト
藤井聡太名人(時事通信フォト)
藤井聡太七冠が名人戦第2局で「AI評価値99%」から詰み筋ではない“守りの一手”を指した理由とは
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン