新型コロナウイルスで打撃を受けた飲食店に対する政府の支援策「GoToイート」キャンペーン(時事通信フォト)

新型コロナウイルスで打撃を受けた飲食店に対する政府の支援策「GoToイート」キャンペーン(時事通信フォト)

 常識的な社会に生きている幸せな人からすれば、そんな人いるのかと思うかもしれないが匿名掲示板全盛の時代から存在する。というか恥ずかしい話だが私のかつて勤めていた出版社の上司は店で気に入らないことがあると「2ちゃんねるに書きますよ」と言うような人だった。宣言したら匿名の意味はないと思うのだが ── 特殊な人の一例と思われるかもしれないが、それと同じようなことを某インフルエンサーが公然と晒した行為は記憶に新しい。SNSを覗けば誰がしかのアカウントが日々同じような行為に及んでいる。グルメサイトに書かれたらよほどの誹謗中傷でもなければ削除は難しいのが現実だ。

「私は以前のように普通に料理を作って、贔屓のお客さまにお出しして喜んで欲しいだけなんですけどね、それで十分、食べていけてますし」

 オーナーのようなタイプの料理人にはなんとも生き辛い世の中になってしまったということか。オーナーはGoToイートにも参加していないし、Uberにも加盟しておらず、ネットで人気の店になろうとも思っていない。それなのに周囲が勝手に巻き込んで、いらぬ悩みの種を押し付ける。

「グルメライターと名乗る方も来ました。知らない人でしたけど、ネットでは有名なんですかね。雑誌名とかも言わないし、名刺もいただけませんでした。グルメサイトに書いているとは言ってましたけど、なんだか怖いし気を使いました」

 こういうグルメサイトの評価欄に書き込んでいるだけで自称グルメライター、フードライターと名乗る連中がいるのも事実だ。名乗ったって構わないのだが、本当に評価するなら名乗らず覆面が基本である。ただ吹聴したいだけならかわいいものだが、こうして名乗ることで過剰な待遇、酷いと金銭を要求する輩もいる。グルメサイトはあくまでユーザー絶対至上主義、神様どころか悪魔でも客は客、店は要求に答えろというスタンスを取っているとは言い過ぎだろうか。もっとも、そんな連中もこのコロナで厳しくなったと聞く。どの店も余裕はなくなり、タカれる店も減った。

「最近また営業が酷いですね。ああいう会社も厳しいんでしょうか」

 営業とはグルメサイトの有料登録の勧誘だろう。コロナ禍で厳しいのは飲食店だけではない。飲食店というメインコンテンツが弱ればグルメサイトも厳しくなる。元々グルメサイトの大口顧客は会社の飲み会や宴会などの団体客であり、店選びに利用してもらえば手数料も大きい。しかし長引くコロナによる自粛と時短営業はもちろん、テレワークによる外食の激減でグルメサイトに対する費用対効果が見合わなくなった店も多い。緊急事態宣言中は利用料を無料にしたサイトもあったが一過性のものでしかなかった。

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