芸能

森七菜が躍動の『恋あた』 痒いところに手が届きすぎる出来

森七菜は全身で演技

 大作が必ずしも高評価を得るとは限らないのがドラマの面白いところである。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 いよいよ秋ドラマも全貌が見えつつあります。特に楽しみなのが、有名脚本家らによるオリジナル作品の競演。ズラリ揃った注目ドラマのバトルが見所の一つと言っていいでしょう。

 スタート順に、まず『女王の教室』『家政婦のミタ』をはじめ話題作を生んできた個性派脚本家・遊川和彦氏による書き下ろし『35歳の少女』(日本テレビ系土曜 22:00)。精神年齢が10歳のまま止まってしまった「35歳の女性」が主人公というトンデモ設定。柴咲コウ主演の「リアル浦島太郎譚」とも言える構成に最初から驚かされました。

 そして、大御所プロデューサーの秋元康氏が企画・原作を担当し、大根仁氏が脚本・監督を務めて注目を集めている『共演NG』(テレビ東京系月曜 22:00)。中井貴一と鈴木京香がW主演とテレ東らしからぬ?豪華なキャスティング、その裏をかくような「業界モノ」の巧妙な仕掛けには初回から揺さぶられました。

 一方、『姉ちゃんの恋人』(フジテレビ系火曜 21:00)は岡田惠和氏が脚本を担当しNHK朝ドラ『ひよっこ』等でも絶好調だった有村架純とのタッグ。ほのぼのとした岡田ワールド全開。弟3人を養うためにホームセンターで働く肝っ玉姉ちゃん(有村架純)の家族物語。

 と、まさに個性的な作品並んでいます。それぞれ力が入っていてテーマ性あり狙いあり仕掛けあり。が、そうした並み居る大物たちが手がけるドラマを横目に、頭一つ抜け出した「巧さ」を見せつけるオリジナル作品が。神森万里江氏という脚本家は上記に比べれば認知度として落ちるのかもしれません。が、だからといって『この恋あたためますか』(TBS系火曜午後10時)を見逃すわけにはいきません。

 物語は……業界最下位のコンビニ店アルバイトと社長の奮闘や恋を描くストーリー。アルバイトの井上樹木役に森七菜、相手役の社長を中村倫也が演じています。一見すると、コンビニという日常の中の日常がテーマであり、スイーツ商品の開発物語という理解しやすさ、そのタイトルからしてどこかで見たドラマの焼き直しのベタな恋愛ドラマかと思いきや……。

 ドラマの基本である「役者・演出・脚本」の3要素が、いずれもズバ抜けて上手で文句の付け所がない。痒いところに手が届きすぎて、あっけに取られたまま第一話、第二話を見てしまいました。あらためて『この恋あたためますか』の魅力をドラマの3要素に沿って見ていくと──。

●役者の巧さ

 何が面白いと言って、まず主演の森七菜さんの演技が巧い。まだデビューから3年の19歳というのに、間合い、呼吸、瞳の動きがセリフにぴたりとシンクロ。心の動きを繊細に表現し、手、指、首、足の動きも活き活きと躍動感があって全身演技。アドリブなのか演出なのかわからない瞬間のボディランゲージが決まっている。

 対称的に、森さんの芝居を受ける浅羽社長役・中村倫也さんは表情をしっかりと制御し静かな大人の風合いで2人の対比が鮮やか。さらにスイーツ開発担当者に仲野太賀、石橋静河、企業スタッフとして市川実日子、山本耕史ら、個性的で芸達者な人々の配置が絶妙。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン