ちなみに、過去の大統領選挙で、フロリダを落として大統領になったのは2人しかいない。2000年にはブッシュ氏とゴア氏が争い、大接戦となったフロリダの選挙結果は最高裁まで持ち込まれ、僅差でブッシュ氏が勝ったと認定されて、ようやく選挙戦が決着したこともある(ブッシュ氏が当選)。前回2016年は、ヒラリー・クリントン氏とトランプ氏の戦いが熾烈を極め、僅差でフロリダを制したトランプ氏がホワイトハウスの主となった。今回、もし結果が接戦であれば、両陣営とも裁判に持ち込むなどして、最終的な選挙結果の確定に時間を要する可能性は十分ある。
そのフロリダでは、極めてユニークな現象が起きている。他州に比べても期日前投票が多く、すでに4年前の投票総数の98%に当たる有権者が投票を済ませているというのだ。つまり、フロリダの選挙結果は、実は“すでに決まっている”可能性もある。しかし、専門家はどちらが有利だとか、リードしているとは言わない。それくらい接戦が続いているからで、過去には500票差といった極小差になったこともあるフロリダの結果を予測するのは難しい。
ここにきて、トランプの追い上げにもう一つ追い風が吹いた。7~9月の国内総生産(GDP)が、前の3か月に比べて年率換算で33.1%という過去最大の伸びを記録したことだ。もっとも、それは4~6月がひどすぎたからであり、まだ前年の水準は下回っている。依然として経済が縮小を続けていることに変わりはないのだが、トランプ氏はこれを自分の実績として繰り返し宣伝し続けるだろう。世界のアナリストやエコノミストは騙せなくても、アメリカの有権者はそれなりに動くはずだ。トランプ氏の不動産ビジネスのインチキが次々と暴露されているが、そのトランプ流会計学は、国家経済でもいかんなく発揮されている。バイデン=ハリス軍は、ここでもトランプ氏の牙城を効果的に攻撃できていない。
最後の局面は、雑音に耳をふさいで決断した有権者の期日前投票vsトランプ・レトリックの扇動という構図だ。投票日まで、あと4日に迫った。