国内

地元紙が報じた河井夫妻買収事件の闇 政界のネット工作は…

保釈され、東京拘置所を出て一礼する河井案里被告(中央)(時事通信フォト)

保釈され、東京拘置所を出て一礼する河井案里被告(中央)(時事通信フォト)

「ネット工作員」ときくと、十年くらい前までは想像の産物、荒唐無稽なものと笑われるのが常だった。ところが、2010年代になってからはくだらないと切り捨てられない状況になってしまった。2019年にオックスフォード大が発表した調査報告によれば、日本ではまだ確認されていないというが、真実はどうなのか。ライターの宮添優氏が、現在、裁判が進行している河井克行被告と河井案里被告の公職選挙法違反事件で明るみに出始めた「ネット工作」についてレポートする。

 * * *
 権力を手に入れた政治家が、対立する候補のイメージダウンを図り、ネット工作で世論操作を行う──。

 現実の世界よりも自由で平等な空間として歓迎されていたはずのネットで、主に言論の場として利用している保守や革新、右や左を標榜する人々の間で常に疑われてきた「噂」が、すでに行われていたのではないかという話が飛び出している。元法相・河井克行被告と妻で元参議・河井案里被告が関与したとされる買収事件の裁判で、具体的に「真実」として語られた内容がそれだ。10月19日、河井夫妻の選挙区・広島の地元紙「中国新聞デジタル」が、河井克行被告から証拠隠滅の指示を受けたというネット業者の証言を詳報した。取材に当たっている政治ジャーナリストが説明する。

「自身の選挙の際に克行被告自身が指示をして、対立候補のイメージダウンのために、ネガティブな記事をネットに出していたと、依頼を受けた業者が証言しているのです。さらにこの業者は妻・案里被告の選挙の際も、克行被告の指示で同じことをやったと言っている。架空の人物を名乗り複数のブログをつくり、そこで案里被告の対立候補や自民党県広島連が案里被告をいじめているのだという記事をアップしたと、具体的な手法についても明らかにしています。また克行被告は、この業者に現金配布先リストの消去を依頼。結局業者が全てを消去しきれず、当局の捜査の突破口にもなったようです」(週刊誌記者)

 筆者の調べによれば、この「ネット業者」は、神奈川県横浜市内のコンサルティング会社A社で、証言をしたのは代表取締役のX氏。X氏が過去に自らホームページに出していたプロフィールなどによれば、大学卒業後に神奈川県選出の代議士秘書などを経て、2009年には、当時の横浜市議選に出馬するも惜敗。その後は、投票率向上に関する事業に参画したり、自民党神奈川県連メンバーが深く関わるメディア事業に合流。市議選出馬の際には、自民党選対副委員長だった菅義偉・現総理も応援に駆けつけていたと話すのは、X氏を神奈川県内の政治関係者。

「当時の菅さんは、まさか10年後に総理になるとは思ってもいなかったでしょうが(笑)、X氏のサイトには菅さんと握手する写真もありましたね。X氏は当時、自民党の横浜市青年局次長の肩書きがあったと思います。落選後も、党に近いところで色々な仕事をしていたようです。X氏と聞いて思い出すのは昨年、野党を貶めたり、極端に与党を応援する記事ばかりを配信していたサイトが、自民系の神奈川県議の弟が運営していると判明し、ネット上でちょっとした騒ぎになりました。X氏はこの弟とも親交がありましたし、ちょうどその頃、SNS上に与党ばかりを応援するブログやSNSアカウントが目立ち始め、X氏も関係があるんじゃないのか、と噂にもなっていました」(関係者)

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン