歴史を振り返ると、古代から近代へ移るにつれて性差の溝が深まり、女性の地位が悪くなっていったように見える。社会状況が変わるたびに女性は男性の労働力の「補充要員」として都合よく扱われ、翻弄されてきたと感じざるを得ない時代もある。
だがその裏側では、男性も「ジェンダーの壁」にぶつかることがあった。
「近代以降は男性も“求められる男性像”に苦しんだのではないでしょうか。明治以降の家族モデルでは男性は家父長として家族を統率し、稼ぎ手になることを求められ、徴兵検査では男性として値打ちがあるかどうかの選別を受けた。それまでの社会にはなかった、新たな男性性の価値基準にさらされるようになりました」(廣川さん)
「男らしく」「女らしく」という価値基準が、人々の苦悩の原因となったことは多いだろう。しかし、性差がそれぞれの時代において社会の発展に欠かせない要素であったことも間違いない。
覚えておきたいのは、「ジェンダー」は普遍的なものではないということだ。
「歴史を振り返ればわかるように、男女の区分やジェンダーのとらえ方は、絶対的に決められていて変えられないものではありません。まずはその事実を知って、自分らしく生きられる社会への手がかりにすることが大切です」(横山さん)
「多様化」という考え方が主流になりつつある現代。歴史を知れば、凝り固まった“常識”が変化するはずだ。
※女性セブン2020年11月19日号