スポーツ

元ヤクルト今浪隆博 部員10人の軟式野球チームで新たな挑戦

ドロップアウトも大舞台での活躍も味わった経験を生かす(時事通信フォト)

ドロップアウトも大舞台での活躍も味わった経験を生かす(時事通信フォト)

 創部1年目の軟式野球実業団チーム「ゴリラクリニックベースボール」の監督を務めるのは、2017年まで日本ハム、ヤクルトで活躍した今浪隆博(36)だ。部員はわずか10名。監督も部員も一度は「野球と決別した道」を歩んだ人が再びグラウンドに集まり、軟式野球に夢を託す。

 今浪は現役引退後、「グラウンドに戻ることは二度とない」と考えていたという。ヤクルトで1軍の戦力として活躍していた2016年のシーズン中に「甲状腺機能低下症」という病に襲われ、鬱病になった。

「球場に近づくと涙がポロポロ流れて誰とも話したくなかった。『自分はなぜここにいるんだろう』と辛い、苦しい思いで一杯になって……なぜそういう感情になるのかうまく説明がつかないのですが、野球から離れると穏やかな気持ちになって大丈夫なんです。これ以上、プロ野球選手でいるとチームに迷惑をかけてしまう。引退が決まった時は草野球もやらないと思ったし、監督をやるなんて想像もしなかった」(今浪)

 2017年で現役を引退すると、アスリートが抱えるメンタルの問題をサポートしたいという思いからスポーツメンタルコーチの資格を取得して活動しているが、グラウンドとは距離を置いていた。周囲の人間も今浪を気遣っていたのだろう。

 そんな今浪に「ウチのチームで監督をやってくれないか」と、思いもよらぬオファーが飛び込んだのは昨年6月だった。熱心にオファーをしたのが、京都・平安高(現・龍谷大付属平安高)で同級生だった柊裕介氏だ。

「このチームの監督は今浪が適任だと思ったんです。アマチュア球界にはプロを目指したけど途中でドロップアウトしたなど、色々な悩みを抱えた選手がいる。その選手たちの気持ちを汲み取ってチームを一つの方向性に導けるのは彼しかいなかった」(柊氏)

 猛アプローチを受けた今浪は悩んだが、「気心知れている柊が誘ってくれたのが大きかった。不安の方が大きかったですが、自分が役に立てるならば」と引き受けた。

「想像以上に能力が高い10人」

 同チームは男性専門の美容クリニック「ゴリラクリニック」の軟式野球実業団チーム。会社の知名度を高めるために創部されたが、昨年7月に部員を募集すると「破格の待遇」と話題を呼んだ。入社して野球部に入部すると、月給25万円に加えて野球手当3万円、さらに野球での活躍に応じ、最大100万円のインセンティブが支給される。また、都内に室内練習場も完備。仕事後は練習できる環境で、今年2月には宮古島でキャンプを行っている。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン