鼻呼吸×腹式呼吸なら自律神経が整う
このように、口呼吸にはさまざまな問題があるが、最大の欠点は、効率よく空気が取り込めない点にある。口呼吸は本来、運動したときなど、短時間に呼吸回数を増やしたいときに行うもの。鼻呼吸よりも口呼吸の方が速く呼吸はできるが、一度に取り入れられる空気量は鼻呼吸の方が多いという。これは、鼻から空気を吸い込むと、神経が刺激され、上気道の通り道を広げてくれるためだという。
「一般的な大人の場合、1回の呼吸で吸い込む空気の量は約500ml。ペットボトル1本分です。しかし、そのすべてが肺に取り込まれるわけではありません。そのうち約150mlは、気道にある“死腔”という場所に送られて、何に使われることもなく、吐き出されてしまうのです。1回の呼吸で取り込んだ空気量が500mlでも250mlでも、必ず150mlが死腔に送られます。ですから、1回にどれだけ多くの空気が取り込めるかが本当に大切なんです」
空気の中に含まれる酸素が不足すれば息苦しいのはもちろん、頭痛や倦怠感を引き起こし、集中力も低下してしまう。酸欠は血流を悪くさせるので、手足の冷えや免疫力低下にもつながる。さらに、生活習慣病のリスクも高まるという。正しい呼吸をすれば、“マスクにおける4重苦”問題だけでなく、さまざまな不調の予防になるのだ。
「正しい呼吸とは、いい空気を効率よく取り入れる呼吸法です。いい空気を取り入れるには、前述の通り、異物やウイルスを取り除いて加湿・加温してくれる鼻呼吸が効果的。そのいい空気を効率よく取り入れるには、腹式呼吸がおすすめです」
口呼吸では無意識に胸式呼吸をしてしまうことが多い。胸式呼吸では呼吸が浅くなりがちで、交感神経が比較的優位になる。そうなると自律神経のバランスが崩れて、不調を引き起こす。
横隔膜を収縮させて行う腹式呼吸なら深い呼吸ができ、しっかり空気を取り入れられるだけでなく、副交感神経が刺激されて自律神経のバランスも整えやすい。また、横隔膜をゆっくりリズミカルに刺激すると、幸せホルモンと呼ばれる脳内物質セロトニンが分泌され、リラックス効果も高まるという。
取材・文/前川亜紀 参考文献/大谷義夫著『疲れやすい、痩せにくいは呼吸が原因だった』(二見書房)
※女性セブン2020年12月3日号