「もっと描きたい」と語る髙橋氏の口調は、終始エネルギーに溢れていた

「もっと描きたい」と語る髙橋氏の口調は、終始エネルギーに溢れていた

 キャリアが充実し、脂が乗っている最中に沸き立ってきた、「もっとたくさん描きたい」との思い。それが可能なフォームへの変化を模索しているうちに、高橋はひとりになった。

 高橋は「何を伝えたいかがはっきりしているのならば、ふらっと前に出て、もう歌い始めればいい」とも言った。”ひとりで多く描く進化したフォーム”でのチャレンジが始まっている。

 セカンドステージから見える新しい景色は、どう変わって見えたか。

「これは、言ってみるならば、これまでの俺はギタリストだったのが、ボーカリストになったのかもしれない。老眼鏡が必要となって初めて、自分の声で歌い始めたんだよ。遅いよね。

 俺が歌わなきゃいけなかったんだ、って気づくのに30年もかかった。でもバンドを解散したら、センターのマイクで歌うしかないんだよ。ミック・ジャガーと喧嘩したときのキース・リチャーズがそうだったようにね。

 俺は、『お前ら、目を覚ませ』って気持ちでギャーンと掻き鳴らすようにこれまで描いてきたんだけど、それが、いまは『目は覚めた。焦点を定めろ』って気持ちで、ひとり歌うんです。それが50代。歳をとるってことじゃないですか」

【プロフィール】高橋ツトム/1965年9月20日生まれ。かわぐちかいじのアシスタントを経て、1989年に『地雷震』でデビュー。代表作に『残響』『スカイハイ』『爆音列島』『SIDOOH/士道』など。現在は「ビッグコミック」に『JUMBO MAX』を、「ビッグコミック増刊号」に『ギターショップ・ロージー』を連載中。自身のバンド「残響エリー」でも活動している。

◆撮影/横田紋子

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