普通に接してくれた両親や愛犬に支えられ、なんとか復帰しましたが、クラブを握るとドライバーの飛距離が30~40ヤードは落ちていました。100ヤードを打つのに9番アイアンですからね。得意だったアプローチやパッティングの感覚もなかなか戻りませんでした。ツアー引退を決めた(2019年)のはこうしたケガの影響もゼロではありません。年齢的なこともありますが、自分の思うようなゴルフができなくなってきたのは大きいです。
最近は後輩プロやジュニアの指導をしています。教え子が活躍すると嬉しいですね。ケガのあとはシンプルなスイングを目指すようになりました。教え子にも自分のケガについても話ができるから、2度の手術は無駄なことでも回り道でもなかったと思っています。
実は引退は完全なものではありません。今の生活の中で、また自分の競技への思いが強くなり、出たくなれば出るつもりです。
【プロフィール】
佐伯三貴(さいき・みき)/1984年生まれ、広島県出身。プロデビュー後にツアー登録最速記録(当時)で初優勝。ツアー通算7勝。
取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2020年12月11日号