「東京は、我々と全く同じ条件で1日2万円の協力金が出ます。だから多くの店が、夜10時以降の酒類提供を自粛したり、店を閉めたりしている。でもすぐ隣の松戸では飲み屋が営業しているとなると、協力金2万円の有無なんてピンときていないお客さんたちからしみてみれば、松戸や千葉北西部の飲食店は意識が低いよね、もしかして闇営業?と見えちゃう。俺たちは要請を無視して、好き勝手に営業しているんだろうってね。要請を無視していると、コロナがウヨウヨしているなんて、風評被害までたつ。東京や茨城からきてくれていた常連さんも来てくれなくなったしね、俺ら悪者なの? って。正直かなり辛いよ」(松戸市の飲食店店員)
千葉県北西部への「要請」は12月2日から22日まで、東京都内は11月28日から12月17日まで。いずれも20日間だが、東京の飲食店だけが協力金の40万円を手にでき、千葉北西部の飲食店には支払われない(※12月14日、東京都は時短要請を1月11日まで延長。協力金も50万円に増額する方針が明らかになった)。すぐ隣の東京を羨ましく思いつつ、嫌味を言われながら営業を続けるしかないという関係者たちの声はどれも悲痛だ。さらに、要請期間が終わっても、コロナが終息するのはいつなのか見当もつかず、客足が戻る可能性も見えてこない。
「春の花見シーズンもダメ、夏休みもダメ、ちょっとコロナが落ち着いて、忘年会や新年会があてにできる年末年始はと思っていたら、それも無理っぽい。借金したり、生活レベルを落として、貯金を切り崩してやってきたけど、もうこれが限界。庶民むけの飲食店がバタバタ潰れているのに、政治家の先生たちはそんな店を利用しないからか、全くわかってくれない」(松戸市の飲食店店員)
千葉北西部で20年以上ラーメン店を経営してきた曽我健一さん(仮名・70代)は、今回の「要請」を機に、ついに店を畳む決意を固めた。
「コロナは正直仕方がない。どうしようもないから。でも、今、店が潰れていっているのは人災ですよ。千葉じゃなく、東京に店を構えていたら、40万円をもらってもう少し踏ん張れたし、潰れることはなかったかもしれません。40万といえば、我々みたいな極小の飲食店にとって、ものすごく大きな金額です。どんどん寒くなっていって、コロナ患者がこれからさらに増えるかもしれない。その時、千葉みたいに協力金を出さない、出せないという自治体が出てくるかもしれない。そうしたら、みんな耐えられませんよ。千葉北西部からダメになっていく様を、もっとしっかりみて欲しい」(曽我さん)
一番酒の注文がある夜10時以降の酒類提供ができない、と言うことが、飲食店経営者にとってどれほど辛いものか、政治家や行政府にはピンとこないのかもしれない。12月7日、地元の声を受けた千葉北西部の5市の市長が千葉県庁を訪れ、協力金を捻出するよう要望書を提出。森田知事は、感染者が増え営業時間短縮の協力を求める場合には、協力金を交付する可能性を示唆したが、その交付を待たずして、廃業を決断する飲食店が出始めているのも現実。
千葉北西部に本店を持ち、東京に店舗を展開する飲食店では、協力金の出ない千葉北西部の本店を完全に閉め、事業を縮小して継続しようという、応急処置的、延命的な手段を取らざるを得なくなっているところもある。感染者数が増え続けている中で、実際の人の生活圏をあまり考慮にいれない杓子定規な、局地的な対応を続けていて良いのか。一刻も早い対応が待たれる。