現在の信者数は公称でおよそ70万人。「実際の数はその10分の1にも満たないでしょう」というのは教団の機関紙『芸生新聞』の発行に携わったことのある元信者の証言だ。信者の高齢化が進み、学園に入学を希望する2世・3世も減少していくなかで起きたのが、2016年7月の学園野球部の活動休止だった。
部内で起きた度重なる不祥事が活動休止へと舵が切られる大きな要因だったが、入学試験を受ける中学生の数が、定員の3割にも満たない学園がそもそも存続の危機にあることが背景にあった。
休部となる直前の2016年4月には、野球部が練習中のグラウンドに突然、貴日止氏と美智代夫人がやってきたという話を当時の部員から聞いた。貴日止氏は1塁側のファウルゾーンに椅子を置き、練習をしばらく眺めていたという。甲子園で春夏7回の優勝、通算96勝をあげた野球部の姿を最後に見ておこうという考えだったのだろうか。
野球部のOBが出場した昨年11月のマスターズ甲子園の際には、3代教祖の貴日止氏が人文字応援を許可し、教祖の代理人が「マスコミは廃部などと言っていますが、近い将来、おしえおや様は復活を考えていらっしゃいます。まずは指導者を探しましょう」とOB会の新会長に就任した桑田真澄に伝えたという。だが、その真意も今となってはわからない。
3代の死去によって、あるいは新たな教祖の誕生によって、全国の高校野球ファンが願ってやまない硬式野球部の復活の道筋が開くことはあるだろうか。
いや、何も変わらないだろう。野球部を復活させる以前に、教団の再建が4代には求められるからだ。
■取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)