コース形態が独特の「中山のマイル」は、枠順による有利不利もはっきりしており、輸送負担もある関西馬が朝日杯FSを敬遠する傾向が強かったのは確かです。角居厩舎でもクラシック戦線で活躍したヴィクトワールピサやエピファネイアは、阪神競馬場の2000m、GⅢのラジオNIKKEI杯を使いました。
舞台が中山から阪神に替わっても、マイルであることに変わりはありません。2016年に朝日杯FSに出走させたクリアザトラックは、その後もマイルを中心に走らせましたし、クラシックを意識したグローブシアターはまだGⅡだった中山のホープフルS(2017年にGⅠに昇格)に出走させました。勝ち上がった馬が多い厩舎では「使い分け」ができるのです。
朝日杯FSは2歳牡馬唯一のGⅠで、外国産馬が出走できるのも興味深かったし、JRA賞の最優秀2歳牡馬は2018年までずっと朝日杯FSの勝者のものでした。しかし、昨年はホープフルS覇者のコントレイルが受賞。今年の活躍を見ればなるほどと思いますが、長い歴史を持つ「朝日杯」の重みが薄れてしまうのは少し残念です。
さらに2018年のサートゥルナーリア、2019年のコントレイルとも、トライアルを使わずに皐月賞に直行して勝ちました。これが既定路線になると、すでにクラシック戦線に突入したようで、未出走の2歳馬などはうかうかしていられなくなりました。
◆角居厩舎 今週の出走予定馬
12月19日(土)
中山8R 3歳上1勝クラス サトノパシュート 牡3 55C・ルメール
阪神7R 2歳1勝クラス メイショウハナモモ 牝2 54武豊
中京6R 3歳上1勝クラス レッドレイル せん4 56☆森裕太朗
12月20日(日)
阪神8R 3歳上2勝クラス スマートアリエル 牝3 54武豊
阪神12R 高砂特別3歳上2勝クラス ロイヤルバローズ 牡5 57坂井瑠星
中京12R 尾張特別3歳上2勝クラス ダブルフラット 牡5 57藤岡康太
【プロフィール】
角居勝彦(すみい・かつひこ)/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許を取得し、2001年に開業。以後19年間、中央でGI26勝、重賞計82勝を含む758勝(2020年11月22日現在)。最多勝利3回、最多賞金獲得5回など13のJRA賞を受賞。地方、海外を合わせたGI38勝は現役1位。デルタブルースでメルボルンカップ、シーザリオでアメリカンオークス、ヴィクトワールピサでドバイワールドカップを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援や障がい者乗馬など福祉活動にも尽力。管理馬は他にウオッカ、カネヒキリ、エピファネイア、ロジャーバローズなど。