本木:で、やるんですか?
柴田:やらざるを得ない(笑い)。
室井:いまの、もういちど聞かせて。
柴田:え~(照れながらも鯔背な口調で)、明日ありと思う心の仇桜、夜半に嵐の吹かぬものかは!ってね。
本木:おぉ~、すらすら出てくる!
柴田:言われていると覚えちゃうんだもん。いまでも何か面倒くさいなと思うとおばばの声が聞こえてきて、「いまやるかぁ」って(笑い)。
本木:自分が覚えてきた格言を次の世代へ継承する姿勢は先生のよう。
柴田:おばばは先生ではなく、ウチの実家は旅館だったんです。
室井:富山の人はみんな教育熱心なのよ。監督のお母さんはたしか……。
本木:はい、母は高校教師でした。
室井:では監督のお母さんの格言を。
本木:エッ!? ウチはどうだろう(笑い)。富山でもちょっと特異な母で、好きに生きろと言われていたものですから。
室井:へぇ、すごいな、お母さん。
本木:ぼくも7人の大家族で育ったんですが、家の中ではたいてい争いが起きていましたね。明治生まれのじいちゃんと、男女平等を訴える母との間で……。その母がよく言っていたのは「嫁に行くというのはひとり、戦場の中に女がいるようなものなんだ」って。で、“刺身のツマ”という言い方も嫌いだと。だから妻と呼ばれると「私は刺身のツマじゃない」と、いつも怒っていました。
室井:進歩的だったんですねぇ。
【プロフィール】
室井滋(むろい・しげる)/1981年に映画『風の歌を聴け』でデビュー。『居酒屋ゆうれい』『のど自慢』『ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜』などで映画賞を受賞。『ヤットコスットコ女旅』や絵本『会いたくて会いたくて』(1月末発売)ほか著書多数。
本木克英(もとき・かつひで)/1963年生まれ。1998年『てなもんや商社』で監督デビュー、藤本賞新人賞を受賞。『超高速!参勤交代』でブルーリボン賞作品賞、日本アカデミー賞優秀監督賞など、『空飛ぶタイヤ』で日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞。
柴田理恵(しばた・りえ)/劇団東京ヴォードビルショーを経て1984年にWAHAHA本舗設立。2016年6月には出身地である富山市特別副市長に就任。主な映画出演作に『化粧師 KEWAISHI』『その日のまえに』『ほしのふるまち』『来る』など。
構成/渡部美也 撮影/政川慎治
※女性セブン2021年1月21日号