103年前の忖度しないやり取りの残り香が……
室井:とまぁ、富山の人は言葉を盛るし、言うとなったら遠慮ない。
本木:ウチの母はずけずけ言いすぎる気もしますけどね(苦笑)。そこまで言わなくてもいいのに、ということをまず言ってから、話を始める。
柴田:わかります。ウチもそうだもん。みんな根が一緒なんですよ。
室井:言わんでいいことをちゃべちゃべと(=でしゃばり)、とかってぎゃあぎゃあ言い合っている。
本木:だから、ひと言多い。あーあ、そのへんは黙っておけばいいのにと心の中で思ってしまいます。
柴田:そこはほら、男があんまり言わんからですよ。富山の男性は、「なんなん、いいちゃ、いいちゃ」って。
本木:そう言って、黙ってる。
柴田:そこが歯がゆいから、女の人がハッキリしてくるんです。
室井:富山の男性は表立って絶対にハッキリしたことを言わないねぇ。
本木:そこで、「何がいいちゃ、いいちゃだ!」って女の人が割って入ってきて、場を整理するんです。忖度しないやり取りが103年前の富山にはあったし、ぼくはおふたりを見ているとその残り香を感じますよ。
室井:あはは! かといってみんなが理恵ちゃんや私のようなタイプかというとそうでもなくて、京都の人じゃないけれど、県民性として第一印象はハッキリ物を言わない人と思われがちなんじゃないかな。富山人はよく知らない間柄では、イエス・ノーの意思表示が曖昧だから。
柴田:つきあいが深まるほど、おばばになるほど、ハッキリしてくる。
室井:ふふ、おっしゃる通り。
【プロフィール】
室井滋(むろい・しげる)/1981年に映画『風の歌を聴け』でデビュー。『居酒屋ゆうれい』『のど自慢』『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』などで映画賞を受賞。『ヤットコスットコ女旅』や絵本『会いたくて会いたくて』(1月末発売)ほか著書多数。
本木克英(もとき・かつひで)/1963年生まれ。1998年『てなもんや商社』で監督デビュー、藤本賞新人賞を受賞。『超高速!参勤交代』でブルーリボン賞作品賞、日本アカデミー賞優秀監督賞など、『空飛ぶタイヤ』で日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞。
柴田理恵(しばた・りえ)/劇団東京ヴォードビルショーを経て1984年にWAHAHA本舗設立。2016年6月には出身地である富山市特別副市長に就任。主な映画出演作に『化粧師 KEWAISHI』『その日のまえに』『ほしのふるまち』『来る』など。
構成/渡部美也 撮影/政川慎治
※女性セブン2021年1月21日号