がまんしたことがないからアドバイスができない
叱責も称賛も常に本音で全力。嘘がなく、直球だ。だからこそちさ子の言葉には力があり、それを聞いた人の心を動かすのだ。
高嶋家では、彼女の「本音」を浴び続けてきた結果、もともと性格がおとなしく「バカ」と言われただけで深く傷ついていた夫も“進化”を遂げてしまった。
本音でぶつかり合ったがゆえの進化である。
「以前はネットで叩かれると、“そんなことないよ”と慰めてくれたんですけど、いまはここぞとばかりに“やっとわかった?”と説教してきます。立派に進化したようで……(笑い)」
もし、普段はうまく怒りを伝えられず、ついがまんしてしまうような人も、ちさ子のように怒りも本音も相手にスパッと伝えられたらどんなにいいだろう。そのコツを聞いてみた。
「つい怒りをがまんして、後で後悔する? それ、私はまったく経験ないです。がまんしたことがないからアドバイスができない(笑い)。
だけど怒ってもその気持ちがうまく伝わらないというのは、よくわかります。相手に対して、いいかげんにしろ、いいかげんにしろってさんざん怒った後に、その人に対して最後に愛ある一言をつけ加えちゃうことがある。
そうすると、ポジティブな人はそこだけ受け取って怒られたことを忘れちゃう。だから最後につけ足す愛情は、本人がちゃんと悪いところを直した後に言うべし。最近、そう思っています」
本音と深い愛情に裏打ちされたちさ子の“愛すべき怒る力”から、まだまだ目が離せない。
【プロフィール】
高嶋ちさ子(たかしま・ちさこ)/1968年東京都生まれ。6才でヴァイオリンを始める。桐朋学園大学を経て、1994年イェール大学音楽学部大学院修士課程アーティスト・ディプロマコースを卒業。『めざましクラシックス』『12人のヴァイオリニスト』などのプロデュースを手がける傍ら、テレビやラジオなどでも活躍。
撮影/加藤千絵
※女性セブン2021年1月21日号