国内

菅首相が打ち出す政策は「幹が見えない七夕の短冊」と大前研一氏

菅政権の政策に批判が集まる理由は?(イラスト/井川泰年)

菅政権の政策に批判が集まる理由は?

 新型コロナウイルスの再拡大と、それへの対応をめぐり、支持率が急落している菅政権はいつまで存続できるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、菅政権の政策について論じる。

 * * *
 遅ればせながら再び「緊急事態宣言」が発令された。新型コロナウイルス禍という出口が見えないトンネルの中、泥縄式の対策で右往左往する菅義偉政権への国民の批判は高まる一方だ。

 昨年末は、菅義偉首相がインターネット番組で「ガースーです」と自己紹介して笑いを取りにいったことや、銀座の高級ステーキ店で自民党の二階俊博幹事長らと高齢者8人で会食したことが問題視されたが、国民の大半が自粛要請に応じて苦労している時に、率先垂範すべき首相が危機感ゼロの能天気な発言や行動をしていたら、非難を浴びるのは当然だろう。

 もとより菅首相の最大の問題点は、確たる国家観も5年後10年後の国家ビジョンもないことだ。国づくりの政策理念として掲げた「自助・共助・公助」は小学校で教えているレベルの話であり、それでは日本をどういう国にしようとしているのか、さっぱりわからない。具体的な政策も「行政のデジタル化」「携帯電話の料金引き下げ」「不妊治療への保険適用の拡大」「国内の温暖化ガス排出を2050年までに実質ゼロ」「地銀再編」「NHK改革」「中小企業再編」など幹が見えない七夕の短冊みたいで、かつての民主党政権のようだ。

 良し悪しはともかく、安倍晋三前首相には憲法改正、安保法制、教育基本法改正といった国家観や国家ビジョンがあった。過去の代表的な例は、田中角栄元首相の「日本列島改造論」、中曽根康弘元首相の「三公社民営化」や「日米イコール・パートナーシップ」である。

 菅首相には、そういう大きな構想や目標が何もない。安倍前首相の「負の遺産」のアベノミクスを継承しているだけである。しかも、菅首相の後ろ盾の二階幹事長は、旅行業界と土木建設業界を牛耳っている「Go Toトラベル」「国土強靭化」「IR(統合型リゾート)」などの旗振り役であり、やはり国家観や国家ビジョンがあるとは到底思えない。

 だから菅首相は、ほぼ毎日、朝食をホテルのレストランで秘書官らと食べ、夜も高級レストランでブレーンの経営者や学者、内閣官房参与、マスコミ幹部らと会食して(昨年12月17日以降は自粛)アドバイスを求めている。それを基にキーワード一発で政策・施策を決め、自分の頭の中で全体を組み立てていないから、散弾銃のように一貫性のないものになってしまうのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン