国内

「山口組若頭射殺事件」 最後の生き残り・中野太郎元会長の死

「山口組若頭射殺事件」の現場(当時、写真/共同通信社)

「山口組若頭射殺事件」の現場(1998年当時、写真/共同通信社)

 1月10日、中野太郎・元中野会会長が世を去った。84歳だった。2003年に脳梗塞で緊急搬送され、以後、リハビリ生活を続けていたという。引退後は暴力団社会とは一線を引き、特段の影響力があったわけではないが、暴力団社会ではそれなりに話題となった。

 山口組在籍時から、中野会は武闘派暴力団の代名詞だった。その名が一般社会にも知れわたったのが1998年8月28日、神戸市内のホテルで五代目山口組の宅見勝若頭が射殺された事件だった。

「“喧嘩太郎”と呼ばれたのは手が早いから。おまけに容赦がない。こんな大胆な犯行は、中野会にしかできないと思った」

 当時、捜査に当たった元マル暴刑事は、そう述懐する。

 中野会長は犯行を認めず、週刊誌のインタビューにシラを切った。しかし、ヤクザの報復にエビデンスはいらない。事件発生から1か月で中野会関係者を狙って21件の襲撃事件が発生した。

 山口組を破門となり、実行犯が中野会関係者だった事実が判明すると、絶縁処分に切り替えられた。中野会と山口組はより激しい抗争に突入した。

 とはいえ、中野会は古巣の山口組を攻撃しない。中野会が一方的に撃たれ、殺戮されたと表現するのが実態に近い。中野会ナンバー2の若頭は麻雀店で撃ち殺され、ナンバー3の副会長は沖縄でヒットマンとカーチェイスの末に射殺された。それでも中野会が報復せず、解散もしなかったのは、宅見若頭殺害が、山口組トップである渡辺芳則五代目の意を酌んだものだったからといわれる。

 2005年7月、渡辺五代目が病気療養を理由に引退を表明すると、中野会長も1か月後に引退し、中野会を解散した。殺戮に明け暮れた男は病院のベッドの上で静かに逝った。

取材・文/鈴木智彦(フリーライター)

※週刊ポスト2021年1月29日号

関連記事

トピックス

万博で身につけた”天然うるし珠イヤリング“(2025年8月23日、撮影/JMPA)
《“佳子さま売れ”のなぜ?》2990円ニット、5500円イヤリング…プチプラで華やかに見せるファッションリーダーぶり
NEWSポストセブン
次の首相の後任はどうなるのか(時事通信フォト)
《自民党総裁有力候補に党内から不安》高市早苗氏は「右過ぎて参政党と連立なんてことも言い出しかねない」、小泉進次郎氏は「中身の薄さはいかんともしがたい」の評
NEWSポストセブン
阪神の中野拓夢(時事通信フォト)
《阪神優勝の立役者》選手会長・中野拓夢を献身的に支える“3歳年上のインスタグラマー妻”が貫く「徹底した配慮」
NEWSポストセブン
9年の濃厚な女優人生を駆け抜けた夏目雅子さん(撮影/田川清美)
《没後40年・夏目雅子さんを偲ぶ》永遠の「原石」として記憶に刻まれた女優 『瀬戸内少年野球団』での天真爛漫さは「技巧では決して表現できない境地」
週刊ポスト
朝比ライオさん
《マルチ2世家族の壮絶な実態》「母は姉の制服を切り刻み…」「包丁を手に『アンタを殺して私も死ぬ』と」京大合格も就職も母の“アップへの成果報告”に利用された
NEWSポストセブン
チームには多くの不安材料が
《大谷翔平のポストシーズンに不安材料》ドジャースで深刻な「セットアッパー&クローザー不足」、大谷をクローザーで起用するプランもあるか
週刊ポスト
ブリトニー・スピアーズ(時事通信フォト)
《ブリトニー・スピアーズの現在》“スケ感がスゴい”レオタード姿を公開…腰をくねらせ胸元をさすって踊る様子に「誰か助けてあげられないか?」とファンが心配 
NEWSポストセブン
政権の命運を握る存在に(時事通信フォト)
《岸田文雄・前首相の奸計》「加藤の乱」から学んだ倒閣運動 石破降ろしの汚れ役は旧安倍派や麻生派にやらせ、自らはキャスティングボートを握った
週刊ポスト
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン